2018年8月13日 (月)

スティーブ・ベリーの小説『The Tudor Plot』(4)

『スティーブ・ベリー』は、過去にも『きわどい』ストーリーを小説に仕立ててきました。

中国の『一党独裁体制』の批判と、『秦の始皇帝の墓ミステリー』とを組み合わせたもの、北朝鮮の『独裁体制』の批判と『アメリカ建国時の財政スキャンダルミステリー』を組み合わせたものなどもありました。

北朝鮮を舞台とする小説では、『金正恩』の腹違いの兄『金正男』を明らかにモデルにした主人公が、弟の『独裁政権』を崩壊させようとする内容で、『アメリカ建国時の財政スキャンダル』の秘密をネタにアメリカを脅して、活動資金や兵器を手にしようとするものでした。この主人公は、小説の中では企みに失敗し、殺されますが、実際の『金正男』も、その後本当にクアラルンプール(マレーシア)空港で暗殺される事件が起きました。

一方中国を舞台とした小説では、中国が『民主主義国家』に変貌したり、ロシアを舞台とした小説では、『ロマノフ王朝』の復興が実現したりと、『あっけらかんと能天気な結末』になっています。

アメリカの読者の潜在的な『願望』をうまく利用した商業主義の大衆小説と云うことなのでしょう。『フィクションなので何でも許される』という能天気な楽観主義が垣間見えます。ハリウッド映画にも、それが見受けられます。

最近の日本は、アメリカに似た風潮もありますが、それでも『スティーブ・ベリー』のような作風の作家は、社会制裁の対象になり、なかなか出現しないのではないでしょうか。

今回の小説の『歴史ミステリー』は、伝説の人物『アーサー王』が実在の人物で、その墓はなんと『アイスランド』に存在するという話になっています。

敵のサクソン人から、墓が凌辱されないようにと、『アーサー王』の家臣(ブリトン人)が、こっそり遺体を『アイスランド』に移し、秘密の場所に埋葬したということになっています。

5~6世紀に、ブリトン人が、『アイスランド』へ進出していたかどうかは、梅爺は分かりませんが、この突飛とも見える発想が、『スティーブ・ベリー』の真骨頂といえるでしょう。

読者の興味をひくためには、『何でもあり』という徹底ぶりです。

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2018年8月12日 (日)

スティーブ・ベリーの小説『The Tudor Plot』(3)

『スティーブ・ベリー』の小説は、今までも何冊かブログで紹介してきました。

何冊も読んだということは、『歴史ミステリー』と現在のドラマを組み合わせたストーリー展開に魅せられてきたからです。

今回の小説は、現在の英国王室のスキャンダルを題材にしていて、確かに現実にスキャンダルともいえそうな事件が色々ありましたから、読者は小説のストーリー展開を、『このようなことがあってもおかしくない』と受け容れてしまうのかもしれません。

梅爺も途中で『バカバカしい』と、読むのをやめてしまったわけではなく、覗きメガネで、いかがわしいものをこっそり観るように、最後まで読みとおしたわけですから、作者や出版社の商業主義に、まんまと乗せられた一人です。

しかし、冷静に我にかえれば、やはり『これは、少しやりすぎ』と思いますので、皆さまに推薦はしかねます。

真面目な方からは叱られそうですが、人間には『他人の不幸は蜜の味』『他人のスキャンダル大好き』という不謹慎な面があるように思います。梅爺は自分にもそのような習性があることを認めた上で、それが暴走しないように理性でなんとか抑制する努力をしています。

一方、当事者の心情を思いやって、苦しみや悲しみを共有しようとする『心』も持ち合わせていますので、なんと『精神世界』は矛盾に満ちた厄介なものかと思わざるをえません。

前者は、『安泰を希求する本能』が根にある『優越感』で、相対的に他人より自分が『安泰である』『有利な立場にある』と判断して安堵する行為です。

一方後者は、他人の『心』を『忖度(そんたく)』して、情感を共有し『絆』を確認しようとする(同情する)行為で、これも『群』でないと生きられない人間の本能が働いた結果です。一見『優越感』と『同情』は矛盾するようですが、同じ『安泰を希求する本能』に根差していると梅爺は考えています。同じ根から、矛盾するようにみえる枝葉が生まれてくるという考え方です。

自分は安全な観客席に身を置いて、進行するスポーツゲームや、社会情勢を『批評する(非難する)』のも、『優越感』からした行為なのでしょう。

この小説は『少しひどい』などと云っている梅爺の態度もこれに類します。

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2018年8月11日 (土)

スティーブ・ベリーの小説『The Tudor Plot』(2)

この小説のストーリーは、何とも『きわどい』と昨日紹介しましたが、どのくらい『きわどい』のかは、紹介するのも憚られます。

しかし、紹介しないわけにもいきませんので、以下に概要を示します。

『陰謀』の張本人(悪人)は、英国の国会議員(貴族籍)の『ニゲル・ユアストーン』です。息子の妻が、英国王室の王女『エレノア』ですが、息子は不妊症で子供は望めません。『ニゲル・ユアストーン』は、『エレノア』を次の王位に就けようと企み、『エレノア』もこの企みに乗ります。

『エレノア』が王位に就くには、先ず『エレノア』の兄の『リチャード皇太子』と、その息子『アルバート王子』が邪魔になります。

『ニゲル・ユアストーン』は、新聞社を利用して『リチャード皇太子』の女癖の悪さを国民に喧伝し、国民の失望を煽ります。『リチャード皇太子』自身も王位継承の意欲はないことから、『王位辞退(息子のアルバート王子に王位を譲る)』の宣言をするように巧みに誘導します。

一方『アルバート王子』は、容姿、振る舞いとも国民に受け入れられ、国民の期待を担う王室の人気者です。『ニゲル・ユアストーン』は、なんと南アフリカのテロリストを利用して、『アルバート王子』を暗殺抹殺しようとします。

『ニゲル・ユアストーン』は、息子の嫁である『エレノア』と関係をもち、『エレノア』を妊娠させて、息子の子供として認知することを企みます。つまりその子が『エレノア』の後に王位を継いだ時に、義父として権力を振るおうという魂胆です。

『ニゲル・ユアストーン』は新しい『ユアストーン王朝』の権威を『アーサー王』を持ちだして確固たるものにしようとします。

勿論これらの企ては、全て主人公『コットン・マローン』の活躍で水泡に帰し、めでたしめでたしで話は終わります。

いかがですか、いくらなんでも『ひどい(きわどい)』ストーリーでしょう。宮廷を我が物にしようとした、『藤原道長』や『平清盛』でも、こんなひどい企ては思いつかなかったでしょう。

小説を売るために、何でもするという、アメリカ人の能天気な一面なのでしょうが、さすがに今度は梅爺も『おいおい、いくらなんでも限度と云うものがあるでしょう』と云いたくなりました。

アマゾンの読者書評にも、『ひどい小説だ』と批判が乗っています。しかし、多くの読者は、奇想天外のストーリーを楽しんでいるようにも見えます。

『ストーリー・テラー』としての才能には梅爺も感心しますが、現存する人物を貶めるようなモデル小説はいただけないと思いました。

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2018年8月10日 (金)

スティーブ・ベリーの小説『The Tudor Plot』(1)

アメリカの歴史推理小説作家『スティーブ・ベリー』の小説『The Tudor Plot(チューダー王朝の陰謀)』を、アマゾンの電子書籍リーダー『Kindle』に原文(英文)をダウンロードして読みました。

多分この本は、日本で書籍として発売されておらず、翻訳本もなさそうですから、電子テキストをダウンロードして読むのが、一番手っ取り早いのではないでしょうか。

現英国王室をモデルに、王位継承の『陰謀』を描いた小説で、登場人物は、名前は変えてあるものの、明らかにモデルが誰かは読者に分かりますから、このような小説は英国王室から名誉棄損で訴えられないのかと心配になるほど、内容は『きわどい』ものです。なにしろ王室のメンバーの一人『王女』が、『陰謀』に加わる『悪人』なのですから。

登場する王室関係者は以下のような顔ぶれです。カッコ内(青字)は、対応する実在の王室メンバーの名前です。

ヴィクトリア2世女王(エリザベス2世女王
ジェームス殿下(
フィリップ殿下:エリザベス女王の夫)
リチャード皇太子(
チャールズ皇太子:最初の妻ダイアナ、現妻カミラ)
エレノア王女(
アン王女:チャールズ皇太子の妹)
アルバート王子(
ウィリアム王子:チャールズ皇太子とダイアナの間の長男)

主人公は、『スティーブ・ベリー』の小説のほとんどに登場する、アメリカ法務省の特殊工作員『コットン・マローン』です。『ジェームス・ボンド』ばりの超人的な活躍が売り物です。今回は、英国王室の王位継承の『陰謀』を見事に暴く役割を果たします。

『スティーブ・ベリー』の小説では、現代のストーリーに、過去の『歴史ミステリー』が絡む構造になっていて、今回は、5~6世紀の『アーサー王』伝説が採用されています。

『アーサー王』は、ブリトン人を率いて、侵攻してきたサクソン人と戦った英雄とされていますが、実在の人物かどうかは現在も分かっていません。

私たちは、『アーサー王』と云えば、『円卓の騎士』『聖剣エクスカリバー』『キャメロット城』などを思い浮かべますが、これらは後代に創られた物語です。

今回は、王位継承を企む悪人が、『アーサー王』が実在の人物であることを墓の発見で証明し、その功績を利用して、王位継承の正当性を国民に訴えようとします。

現在の英国王室は『ウィンザー家』と呼ばれていますが、元は『Saxe-Coburg(ザクセコブルグ)家』で、これは、ビクトリア1世(女王)の配偶者が、ドイツ『Saxe-Coburg家』の出身であったからです。しかし、第二次世界大戦の時にドイツ色を排除するために『ウィンザー家』に改名されました。

陰謀者は、ドイツを先祖とする現王室ではなく、正当な英国王朝の創設を、『アーサー王』を利用して国民に印象付けようということなのでしょう。

このようなことで、英国民が新しい王を認めるのかどうか、梅爺にはどうもピンとこない話です。なにやら無理やり『陰謀』と『アーサー王』を結びつけた感がぬぐえません。

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2017年7月 7日 (金)

スティーブ・ベリーの小説『The Jefferson Key』(4)

『憲法』はどの国にとっても『あるべき姿(理念)』を規定したものですから、人間社会を維持するために重要なものです。

特に『アメリカ』は『多民族国家』『州を束ねた連邦国家』としてイギリスから独立するかたちで建国しましたから、『憲法』は特に重い意味を持っています。

国民も『憲法』は、自分たちの先祖が勝ち取って創り上げたものと受け止めていますから、国民にとって『不都合』なことが出来(しゅったい)すれば、『憲法』は改定できるものと受け止めています。

現に『改定』は何度も行われています。勿論、その『改定』は『議会』が決定した後に『州』が『批准』することで成立します。

『憲法はむやみに変えてはいけないもの』という感覚が強い日本とは、かなり事情が違うように梅爺は感じます。

一方、『憲法』で決められてることは、『認める』という論理的な判断も強いことになり、この小説のように建国時に『アメリカ』のために『海賊行為』で敵国『イギリス』『スペイン』と戦った『組織』に、『憲法』に従って『特別の権限を付与された』ということが事実なら、今でもその末裔の『組織』は、『特別の権限』を保有しているというような論理になります。

この小説は、そのような背景を利用して展開しますが、日本人のように『海賊行為は悪いこと』『国家がそれを認めることは悪いこと』と自分の価値観で考えてしまう人にとっては、理解しがたいことでもあります。

日本を舞台としてこのような小説は出現しないのはそのためです。

『憲法』は『約束事』に過ぎないので、不都合なら『改定する』ことに抵抗が少ないアメリカ人と、『憲法』を『金科玉条』として簡単に変えてはいけないと考える傾向が強い日本人と、どちらが『正しい』かなどと議論することはあまり意味がありません。

しかし、日本人も、世界にはいろいろな国があり、それぞれ異なった歴史、文化、価値観を保有しているという『違い』は認識する必要があります。

この小説は、日本人には『そんなことがあるのか』と疑いたくなる内容ですが、アメリカ人には『起こりうる当り前のこと』なのかもしれません。

小説は面白く読みましたが、『アメリカ』は『日本』とは違うという印象が、強く残りました。

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2017年7月 6日 (木)

スティーブ・ベリーの小説『The Jefferson Key』(3)

世界の国家は、どれも細かく見れば、成立時の特殊な事情があったり、継承している歴史や文化が異なりますから、現状の『国の運営方式』はそれぞれ違いがあります。 

多くの人は、外国の『国の運営方式』などについて、知識を持ち合わせませんから、他国も自国と同じように運営されていると勘違いしがちです。 

特に『アメリカ』は、大国であり、日本人も身近に感ずる国のひとつで、情報も多いために『アメリカのことは分かっている』と思いがちですが、実は分かりにくい国の部類に属すると梅爺は感じています。 

一つは自治権限の強い『州』を束ねた『合衆国』であるということでしょう。アメリカの『州』は、日本の『県』とはかなり違います。 

日本の『県』は、明治政府が、お上の意向として割り振った、いわばお仕着せの区画割りですが、アメリカの伝統ある『州』は、建国以前に、『独立国』に等しい自治を保有していたコミュニティです。 

広大な国土を持つアメリカが、『州』による一種の連邦国家体制を採用し、『州』にかなりの自治権を与えたことは、民主国家の立場を維持する上で必要なことであったように思います。 

しかし、何事も長所が短所になりますから、『中央政府の支配』と『州の支配』が二重構造になり、時に双方の間に軋轢が生じたりします。このために逆に『大統領』に権限が集まる仕組みも必要であったのでしょう。 

『司法(裁判の仕組み)』『犯罪への対応(警察の仕組み)』が二重構造になっている上に、かなり基本的な人権にかかわる『法』も、『州』によって異なったりします。たとえば『同性愛』同士の『結婚』を認める、認めない、『生物進化論』を学校で教えることを認める、認めないなどということも『州』によって対応が異なります。

更にややこしいのは、『国家安全』『対テロリズム』に関わる『情報機関』が、『CIA』や『FBI』ばかりではなく、国防総省やその他主要省庁の下部組織にも存在し、各々が功を競ったりして、必ずしも連携していないために、問題を起こすことがあることです。これらの仕事に従事している人間の数も、日本では想像できないほどの数に上ります。

この小説でも、善玉の『情報機関』と悪玉の『情報機関』が対立し、悪玉は『拉致』『殺人』も辞さないといった非道な悪役として登場します。

国家には、当然のこととして大規模な『諜報機関』や『情報機関』が存在するとアメリカ人が受け止めているとしたら、日本人の感覚とは異なります。

『自由な国』『民主主義を信奉する国』という一面の裏に、『国益優先』という大義名分で、手段を選ばず行動する強大な『諜報機関』『情報機関』が存在するということですから、『アメリカ』は『素晴らしい国』であり『恐ろしい国』です。

もっとも『人間』と同じで、生きていくためには、『きれいごと』だけではやっていけないという『現実』があるとしたら、『きれいごと』だけで済まそうとする日本人は『能天気』なのかもしれません。

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2017年7月 5日 (水)

スティーブ・ベリーの小説『The Jefferson Key』(2)

『スティーブ・ベリー』の歴史小説は、その都度『世界史』『アメリカ史』の中から謎が選ばれテーマになります。 

古代の『アレキサンダー大王』から、現在の『北朝鮮世襲独裁体制』まで、何でも小説にしてしまいます。 

『北朝鮮世襲独裁体制』を題材にした小説では、最近マレーシア空港で暗殺された『金正男(キムジョンナム)』とおぼしき人物が、祖国の腹違いの弟で独裁者の『金正恩(キムジョンウン)』とおぼしき男と、権力闘争する話でした。 

今回の暗殺が起きるずっと以前に小説は書かれていますから、『スティーブ・ベリー』は『ほらみなさい、そのようなことが本当に起きたでしょう』と得意顔になっているかもしれません。 

題材は、小節ごとに異なりますが、主要登場人物は大体いつも同じで、主人公の『コットン・マローン』の名をとって『コットン・マローン・シリーズ』と出版社は名付けて宣伝しています。 

『コットン・マローン』はアメリカ人の中年男性で、元アメリカ法務省の特務機関の工作員です。現在は、デンマークのコペンハーゲンで『古本屋』を営んでいますが、特務機関の女ボスの要請で、今でもフリーランサーで事件に関与することになります。勿論『頭脳明晰』『運動神経抜群』『乗り物の操縦は全てOK』『武器操作もOK』『外国語堪能』で、いつもスーパーマンのような不死身の活躍をします。

法務省特務機関の女ボス『ステファニー・ネリ』、『コットン・マローン』の恋人『カシオペア・ヴィット(スペイン人で、これまたスーパー・ウーマン)』、それにアメリカ大統領『ダニー・ダニエルズ(仮想の人物)』も小説の常連で、今回も登場します。

今回の悪役は、アメリカ建国当時に『海賊行為』で、イギリスやスペインの商船、軍艦を略奪し、アメリカを助けた『海賊連盟』の末裔組織『コモンウェルズ』です。この『コモンウェルズ』との関係を利用して立身出世しようという政府内の要人も登場し、話が複雑さを増します。

建国当時、アメリカ議会は『海賊連盟』に『活動を認める特権を付与する議決』をし、後の大統領『アンドリュー・ジャクソン』がこの議事録の存在を好ましくないと考え、『暗号』を使って秘匿してしまったという物語になっています。この『暗号』は『ジェファーソン大統領』が昔考え出した方式を利用しているという筋書きです。

『海賊連盟』の末裔『コモンウェルズ』は、この議事録を必死で探しだして、今でも自分たちの『特権』は憲法で保証されていることを明らかにしたいと暗躍します。

これを阻止しようとするアメリカ大統領『ダニー・ダニエルズ』は、『コットン・マローン』達を利用して対抗します。

勿論、最後は『コモンウェルズ』は崩壊に追いやられ、暗号を解いて見つけた『議事録』も闇に葬られ、メデタシ、メデタシで終わりますが、その間、物語は、アメリカ、カナダを舞台に息もつかせぬ大活劇で進行します。

物語の筋書きを紹介するのが、このブログの目的ではありませんから、このような小説が『虚構』にせよ登場する『アメリカ』という国について、感想を述べたいと思います。

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2017年7月 4日 (火)

スティーブ・ベリーの小説『The Jefferson Key』(1)

アメリカの歴史ミステリー小説作家『スティーブ・ベリー(Steve Berry)』の小説『The Jefferoson Key』を、英語版ペーパーバックで読みました。

最近は、アマゾンの電子ブックリーダー『Kindle』で読書することが多くなりましたが、『The Jefferson Key』は、買い置きの未読本として書棚に残っていたものです。

『スティーブ・ベリー』は、有名な史実と、『荒唐無稽』なフィクションを組み合わせて『破天荒』な物語を創出する能力にたけた作家です。今までも『梅爺閑話』では多くの読後感想を掲載してきました。

『史実』と『フィクション』の組み合わせが読者を魅了するのでしょうが、それにしてもよくこのようなフィクションを思いつくものだと梅爺は感心してしまいます。

『The Jefferson Key』の『Jefferson』は、第三代アメリカ大統領『トーマス・ジェファーソン』のことで、『暗号好き』の彼が考案した装置を利用して、後の大統領『アンドリュー・ジャクソン』が、ある『史実』を秘匿したという話になっています。この『暗号解読』が物語では重要な役割を果たすことになります。

この小説で、読者の度肝を抜く『想定』は、今まで4人のアメリカ大統領が暗殺されていますが(下記)、実はある同じ『秘密組織』が自分たちの組織を守るために行った犯罪であるというものです。勿論フィクションですが、その突飛な発想には驚きます。

第16代大統領『エイブラハム・リンカーン』 1865年
第20代大統領『ジェームズ・ガーフィールド』 1881年
第25代大統領『ウィリアム・マッキンリー』 1901年
第35代大統領『ジョン・ケネディ』 1963年

『秘密組織』は、アメリカの建国時に、アメリカのために功績をあげた『海賊の同盟組織』を先祖とする集団です。『海賊』がイギリスやスペインの商船や軍艦を襲って、間接的にまだ弱体であった当時のアメリカ政府を『助けた』ことは『史実』のようですが、その末裔が『秘密組織』として現在まで継続しているというのはフィクションです。

アメリカの憲法(第一章、八節)には、アメリカ議会は『国家に貢献した特別な組織に、特権的な権限を与えることができる』というような内容があり、建国当時、『海賊の同盟組織』に『活動を認める』議決がなされたという想定に小説はなっています。

この『特権付与』は『好ましくない』と考えた『アンドリュー・ジャクソン大統領』が、この議会の『議事録』部分を抜き出し、秘密の場所に隠匿し、その場所の『謎』は、『ジェファーソン』が愛した暗号方式で解かないと分からないという筋書きで小説は展開します。

勿論、『特権付与』も、その『議事録秘匿』も、作者の考え出したフィクションです。

あまりに『荒唐無稽』な話に、『それはないだろう』などとつぶやきながらもついつい最後まで読まされてしまうのが『スティーブ・ベリー』の小説の特徴です。

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2017年1月24日 (火)

Steve Berryの小説『リンカーンの神話』(8)

『ジョセフ・スミス』が『キリスト』から託された『正しい教会』というのは、『原始キリスト教』で『キリスト』と12人の使徒が保有していた『神権(神の機能を地上にもたらす権限)』を、再び取り戻した『教会』ということらしいのですが、梅爺の理解を超えています。

その後『ジョセフ・スミス』の前に、12使徒の『ペテロ』『ヤコブ』『ヨハネ』が天使として現れ、神の啓示が『ジョセフ・スミス』を介して継承されていることが確認されたということになっています。

更に、アメリカ古代に存在した預言者『モロナイ』のお告げで、『金板に改良エジプト文字で刻まれた書物』を掘り出し、この内容を英語に翻訳して『モルモンの書』として出版(1830年)しました。この『モルモンの書』は、『聖書』と並ぶ『聖典』として扱われています。ただし『聖書』には、後の人たちの間違った解釈も含まれているとしています。

原書の『金板』は、『モロナイ』に返され、いまは『天』に保管されているということになっていて、誰も『金板』を目にすることができません。『ジョセフ・スミス』に『改良エジプト語』を翻訳する能力が本当にあったのか、も含め何やら『いかがわしい』話ですが、英語版の『モルモンの書』は確かに現存しますから、ある種の『文学的才能』には恵まれていたのでしょう。

『モルモン教』は、『三位一体』『原罪』といった『カトリック』の重要な教義を否定しています。『最後の審判』を重視していて、生前『モルモン教』の教えに接しなかった人も、その時受け入れれば『天国』へ行け、あくまでも拒んだ人だけが、サタンとともに地獄へ落ちると説いています。後に否定しましたが、当初の『モルモン教』では『一夫多妻』を認めていたために、アメリカ社会から強い非難を受けました。

梅爺の率直な感想は、『人間の精神世界は、自由奔放に虚構を創り出すことができる』ということの証左のようなものだということです。真面目に『モルモンの書』を読んでみたいという気はなりません。

『宗教』は、必ずこのように『宗派分かれ』していくのも、『人は個性的である』という人間の本質的特徴が関与しているためなのでしょう。『私はそうは思わない』という人が必ず出現するからです。

この小説では、『リンカーン』は、神話のように信じられている『奴隷解放を推進した人道的な理想主義者』ではなく、冷徹な決断を下し責任を取ろうとする現実主義的な政治リーダーの側面も備えていたということを強調しています。『アメリカ合衆国から州の離脱を防ぐためなら、奴隷制を認めてもよい』という判断をしていたということになっています。

一人の人間の中に、時に矛盾するような多様な側面があるということで、梅爺は抵抗なく受け入れることができます。この小説を読んで『リンカーン』に親近感を持つことはあっても、幻滅を感じるというようなことはありませんでした。

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2017年1月23日 (月)

Steve Berryの小説『リンカーンの神話』(7)

この小説の筋書き以上に梅爺の興味をひいたのは、『モルモン教』が誕生した経緯です。『宗教』は人間の『精神世界』を理解する上で、貴重な手掛かりを提供してくれると考えるからです。

梅爺の基本的な推測は、『神(仏)』が存在するから『宗教』が生まれたのではなく、人間が『神(仏)』という抽象概念を創出し、『神(仏)』との対応を体系的に様式化するために『宗教』も創出したというものです。

前にも書いたように、『生きる』環境を取り巻く『摩訶不思議(にみえる事象)』を、放置することは『不安』のストレスとなるために、『神(仏)』という概念を創出することで、『因果関係』を特定し、『不安』を解消しようとしたからではないかと考えています。つまり『安泰を希求する本能』が背景にあるという仮説です。

『信仰』が『心の安らぎ』をもたらすなどという体験は、高度に洗練化された『宗教』で初めて得られたもので、『原始宗教』は、『得体のしれないもの』に対する『畏れ』が基盤になっているように見えます。人間にとって都合のよいものをもたらして欲しい、人間にとって都合の悪いことはもたらさないで欲しいと『祈願』することが主体となっています。

洗練された『宗教』で、『神(仏)』を『愛(慈悲)』の象徴としてしまったために、その対極の『悪魔(悪霊)』という概念を創出せざるをえなくなりましたが、『原始宗教』では、『神』と『悪魔』の区分は明確ではありません。都合がよいことも、都合が悪いことももたらす『得体が知れない恐ろしい存在』であったからです。

『宗教』には必ず、『神(仏)』と人間との仲介役である、『呪術師』『巫女』『神官』『僧侶』『預言者』が登場するのも興味深いことです。

『神と交流できる特別の能力』の内容について、そのような能力のない梅爺はただ想像するしかありませんが、『精神世界』で『虚構』を創出する才能の一つと考えれば、特別に能力にたけた人が存在することはある程度理解できます。梅爺には到底生み出せない芸術作品(虚構)を、『モーツァルト』『ゲーテ』『ゴヤ』は生み出せる能力の保有者であると認めるからです。

しかし、『宗教』における『神』と人間の仲介者の『主張』は『虚構』であると考えるのは梅爺のような一部の人間で、多くの方々はこれを『事実』として受け入れるために、ややこしい話になります。しかし、誰も『理』で『事実』であることを証明できませんので、『信ずる』という行為で受け入れるしかありません。

預言者が、『神が私の前に現れてこう言われた』『夢でお告げを受けた』などと言えば、普通の人が受け入れるには『信ずる』しかないという話です。

『モルモン教』もこのパターンで始まっています。『ジョセフ・スミス』の前に、『神』と『キリスト』が二人連れで現れ(示現し)、『キリスト』が、『現存のキリスト教宗派のすべてが誤っている。おまえはどの教会にも加わってはいけない』と述べた後に、『正しい教会』へ戻すための権限(預言者としての)を『ジョセフ・スミス』に託したということになっています。

梅爺が、『私は夢で、預言者になれと神のお告げを受けたぞ』といっても、周囲は『お前気でも触れたか』と冷笑するだけでしょうが、この程度の話で『モルモン教』が成立したということは『ジョセフ・スミス』には、他人を惹きつける特別の魅力があったのでしょう。

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