2019年12月 2日 (月)

『Steve Berry』の小説『14番目の植民地』(4)

『Steve Berry』の小説は、『史実(事実)』と『虚構』を組み合わせて、奇想天外ともいえるストーリーが展開する所が特徴です。

勿論、常連の登場人物がいて、読者は新しい作品で、彼らに再会し、旧知の知人に会ったような懐かしさを感じます。

『コットン・マローン』がスーパー・ヒーロー。中年のアメリカ人男性。デンマークで古本屋を営んでいる。独身(離婚歴あり)。アメリカ司法省の特殊工作機関『マジェラン・ヴィレ』の元工作員。現在は、フリーランスで、事件があるごとに『マジェラン・ヴィレ』から依頼を受けて活動している。

『カシオペア・ヴィット』がスーパー・ヒロイン。スペインの富豪の娘で、現在はフランスに在住。中世の工法で、『城』を再現しようとしている。独身。フリーランスの冒険家。『マジェラン・ヴィレ』と関係があり、ここからの依頼で事件解決に加わる。『コットン・マローン』とは恋人関係。

『ステファニー・ネリ』。アメリカ人中年女性。『マジェラン・ヴィレ』の責任者。独身(結婚歴あり)。アメリカ大統領と親しく、必要時には大統領のバックアップが得られる。物語は大体、彼女が掴んだ『情報』で始まる。

今回の小説の犯人側は、『ソ連』の『KGB』の元スパイ2人。一人は『ソ連』崩壊後、シベリアで暮らしていた男『ゾーリン』、もう一人はアメリカ社会に溶け込んで、現在はカナダ在住の男『ケリー』。『ケリー』は『米ソ冷戦』時代、小型『核爆弾』を5個アメリカへ持ちこみ、ワシントン郊外の秘密の場所に隠匿。『核爆弾』の保守点検を続けてきて、現在でも『使用可能』状態を維持している。

『ゾーリン』と『ケリー』は、先ずカナダで落ち合い、一緒に車でアメリカへ潜入。隠匿してあった5個の『核爆弾』を回収して、『大統領就任式』が行われる直前のワシントンDCへ向かう。

4個の『核爆弾』は、わざとアメリカ側の警戒網に見つかるようにしくみ、その隙に、1個の『核爆弾』を、『ホワイト・ハウス』の真下の地下へ設置して、『大統領就任式』に合わせて爆発するようにセット。

手に汗を握るような緊迫事態に、我らがヒーロー『コットン・マローン』が見事に対応して。『核爆弾』の爆発は未然に防がれて、メデタシメデタシとなります。

『ステファニー・ネリ』をバックアップしてくれていた『大統領』は今回退任し、次の『大統領』の意向で、特殊任務機関『マジェラン・ヴィレ』は閉鎖されることになっていましたが、今回の功績を新『大統領』が認め、『マジェラン・ヴィレ』は継続できることになり、こちらもメデタシメデタシとなります。

引退した元『大統領』は、引退後離婚をほのめかしていますので、こちらは『ステファニー・ネリ』とのロマンスが今後待ち受けているような気配がします。

『小型核爆弾』が本当に実在し、現在でも作動可能なのかどうかは、梅爺には分かりません。

| | コメント (0)

2019年12月 1日 (日)

『Steve Berry』の小説『14番目の植民地』(3)

『レーガン大統領』は、『ソ連』の経済的な破綻を早めるために、『大陸間弾道ミサイル』の攻撃からアメリカを防衛する為の完璧な『宇宙防衛システム』を開発すると宣言し、そのための膨大な開発予算を議会に承認させました。

科学者や技術者の多くは、それが実現困難な難題であることを進言し、膨大な国費の浪費になることを危ぶみましたが、『レーガン大統領』は断固たる態度で、この計画を進める姿勢を崩しませんでした。

『レーガン大統領』も、実はこの計画の実現は難しいと本心では思いながら、対抗上『ソ連』にも膨大な軍事開発の出費を強いることで、『ソ連』の経済的破綻を早めようとしたのであれば、大変な策略家であるということになります。

経済的な体力消耗競争に持ち込めば、アメリカは『ソ連』に勝てると読んだ『大バクチ』ということになります。この小説では、『宇宙防衛システム』などという大アドバルーンを打ち上げた真意を、『大バクチ』とみなし、結果的に『レーガン大統領』が勝利を収めたことを讃えています。

『米ソ冷戦』が幕を閉じた後、この『宇宙防衛システム』はどの程度の完成度に至っているのか梅爺は分かっていませんが、現在でも完璧なレベルとは言えないものなのではないでしょうか。この計画で甘い汁を吸ったのは『軍需産業』だけであったのでしょう。

一方、法王の『ヨハネ・パウロ2世』は、『ソ連』の支配下にあった東欧職の『民主化運動』を支援し続けました。

『KGB』が、法王暗殺計画を仕組んだという話は、もっともらしい話であり、現在ではそれが『事実』と考えられています。

法王は、自分を暗殺しようとした犯人に直接面会し、『あなたを許す』と伝えた話は有名です。これで法王の人気は一層堅固なものになりました。

『経済的』『思想的』に、追いつめられていった『ソ連』は、アメリカやバチカンへ報復する計画を『KGB』中心に進めようとしたことは当然予測できます。

この小説では、『ソ連』6代目の指導者『アンドロポフ』が、自ら『アメリカへ大打撃を与える計画』を立案し、5人の『KGB』に特別の任務を課したことになっています。

5人には、別々の役割分担が科せられ、その全体像は『アンドロポフ』だけが掌握していたということになっています。

5人が、それぞれの任務を果たせば、必然的に『アメリカへ大打撃を与える計画』は達成できるという、込み入った話です。

不幸なことに『アンドロポフ』は、書記長の任期2年で病死してしまいました。そしてその後『ソ連』は、崩壊してしまい、『アンドロポフ』の計画は、実行されずに宙に浮く形になってしまいました。

この小説では、5人の『KGB』のうち、現代まで生き残った2人が、『アンドロポフ』の計画の全貌を突き止め、これを実行に移すというストーリーになっています。

勿論『アンドロポフ』の計画や、2人の『KGB』は『虚構』です。

| | コメント (0)

2019年11月30日 (土)

『Steve Berry』の小説『14番目の植民地』(2)

アメリカが『カナダ』を武力制圧して、自国の領土にしようとしたことが、歴史上2度あったことを、この本を読んで知りました。

最初は、アメリカの『独立戦争』の時で、東部13州に『カナダ(14番目の植民地)』を加えようとしたことです。この試みは失敗し、逆にイギリスにワシントンまで攻め込まれ、大統領公邸(後のホワイトハウス)は消失しました。

後に、『ホワイトハウス』が再建されたとき、大統領は、もしもの時の秘密の逃げ道として、『ホワイトハウス』と隣接する『聖ヨハネ教会』を地下道で結んだということに、この小説ではなっています。この秘密の工事を担当したのが、『シンシナチ協会』という愛国団体で、現在まで継承されている『シンシナチ協会』に保管されていた過去の資料の中に、上記の秘密の地下道に関する記述があり、この情報が『米ソ冷戦時代』に『KGB』の手に落ちたというストーリーになっています。

『大統領就任式』に合わせて、ワシントンを小型『核爆弾』で消滅しようとする、元『KGB』の犯人が、上記の地下道を利用して、『ホワイトハウス』の真下に『核爆弾』をセットしようとする話になっています。

『ホワイトハウス』の再建、『シンシナチ協会』の存在、『聖ヨハネ教会』などは、『事実』ですが、『秘密の地下道』『小型核爆弾』などは、『虚構』です。

2度目にアメリカが『カナダ』を武力制圧して自国の領土にしようとしたのは、『第二次世界大戦』の初期のころで、ヒトラーがイギリス本土を制圧すれば、イギリスと関係が深い『カナダ』にも手を伸ばしてくるであろうと予測し、先に手を打って『カナダ』をアメリカのものにしておこうとしたことになります。

『カナダ』武力制圧の詳細計画が、残されているのは『事実』のようです。しかし、この計画は実行されませんでした。

この小説の背景として描かれているもので、興味深いのは、『米ソ冷戦時代』に、『レーガン大統領』が、バチカンを訪れ、当時の法王『ヨハネ・パウロ2世』と二人だけで『密談』をしている『事実』です。

この時二人は『ソ連を崩壊させる』意思を確認しあったということに、この小説ではなっています。『密談』の内容に関しては、実際は明らかにされていませんが、後の『レーガン大統領』『ヨハネ・パウロ2世』の行動と、『ベルリンの壁崩壊』『東欧社会主義諸国の民主化』『ソ連の崩壊』はつながっているようにも見えます。

『レーガン大統領』はタカ派のあまり有能ではない大統領と評価されることが多いのですが、実は強い意志で『ソ連崩壊』を実現した政治家であったということにこの小説ではなっています。

ポーランド出身の『ヨハネ・パウロ2世』は、東欧諸国の『民主化』を支援した政治的な法王として有名です。このため、2度の『暗殺』計画に巻き込まれています。『暗殺』は2度とも未遂に終わりましたが、最初の『暗殺』の背後に『KGB』が絡んでいるらしいことは、歴史的に『事実』と考えられています。

| | コメント (0)

2019年11月29日 (金)

『Steve Berry』の小説『14番目の植民地』(1)

アメリカの大衆小説作家『Steve Berry』の小説『The 14th Colony(14番目の植民地)』を電子書籍リーダー(Kindle)に英語版(原書)をダウンロードして読みました。

『コロニー』は、歴史的にアメリカ東部に、英国が開拓した13の『植民地』のことで、これがアメリカの独立戦争(英国との戦い)で13の『州』として独立を果たし、最初の『アメリカ合衆国』が誕生しました。

『The 14th Colony(14番目の植民地)』は、現在の『カナダ(東部)』に当時英国が保有していた『植民地』のことで、アメリカは独立の時、ここも『アメリカ合衆国』の一部にしようと画策しましたが、失敗しました。

この小説は、その歴史的事実を一つの題材にしていますが、主たるストーリーは、『米ソ冷戦』で『ソ連』が敗北して崩壊した歴史を背景にしています。

『米ソ冷戦』の時代、『ソ連』は全世界に70万人もの『KGB(スパイ工作員』メンバーを配備していたと言われています。

勿論『仇敵アメリカ』には、沢山の『KGB』要員が送り込まれ、いざという時に利用するアメリカの『弱点』を探っていたことになります。

この小説は、『ソ連』の崩壊後、一部の狂信的『KGB』の元要員が、アメリカへの報復をする執念を持ち続け、30年後の現在のアメリカに『最大限の打撃』を与えようとする話になっています。

あくまでも、元『KGB』要員の復讐計画で、現在の『ロシア』が背景には絡んでいないことになっています。

アメリカに与える『最大限の打撃』の内容が、奇想天外なもので、アメリカの新旧大統領の交代の儀式(新大統領の就任式)に合わせて、ホワイト・ハウスや『キャピトル・ヒル(国会議事堂)』を含むワシントンDCの中心地を、小型『核爆弾』で攻撃して消滅させようというストーリーになっています。

アメリカの『憲法』では、『大統領』が不慮の死を遂げた時には、『副大統領』がその役目を引く次ぐことになっています。更に『副大統領』も不慮の死を遂げた時には、次にだれが引き継ぐかといった、序列が細かく規定されていますが、『新大統領の就任式』では、国家の要人が参列のために全て同じ場所に集まっていることになり、この人たちが全て一緒に亡くなってしまうと、アメリカは路頭に迷うことになります。

元『KGB』要員は、これらのアメリカの『弱点』を熟知していて、実現のために小型『核爆弾』をワシントンDCの中心地で炸裂させようとします。

『新大統領の就任式』という、警備が厳しいワシントンDCにどのように小型『核爆弾』を持ちこむのか、大体そのような小型『核爆弾』が存在する可能性はあるのか、といった読者の疑問に、作者は『もっともらしい話』で応えていきます。

歴史を絡めて、現代を舞台にする破天荒な『ミステリー小説』を次々に発表するのが『Steve Berry』の真骨頂です。『真実』と『虚構』の組み合わせの面白さに惹かれて、梅爺はこの作者の小説を読み続けています。

| | コメント (0)

2018年8月13日 (月)

スティーブ・ベリーの小説『The Tudor Plot』(4)

『スティーブ・ベリー』は、過去にも『きわどい』ストーリーを小説に仕立ててきました。

中国の『一党独裁体制』の批判と、『秦の始皇帝の墓ミステリー』とを組み合わせたもの、北朝鮮の『独裁体制』の批判と『アメリカ建国時の財政スキャンダルミステリー』を組み合わせたものなどもありました。

北朝鮮を舞台とする小説では、『金正恩』の腹違いの兄『金正男』を明らかにモデルにした主人公が、弟の『独裁政権』を崩壊させようとする内容で、『アメリカ建国時の財政スキャンダル』の秘密をネタにアメリカを脅して、活動資金や兵器を手にしようとするものでした。この主人公は、小説の中では企みに失敗し、殺されますが、実際の『金正男』も、その後本当にクアラルンプール(マレーシア)空港で暗殺される事件が起きました。

一方中国を舞台とした小説では、中国が『民主主義国家』に変貌したり、ロシアを舞台とした小説では、『ロマノフ王朝』の復興が実現したりと、『あっけらかんと能天気な結末』になっています。

アメリカの読者の潜在的な『願望』をうまく利用した商業主義の大衆小説と云うことなのでしょう。『フィクションなので何でも許される』という能天気な楽観主義が垣間見えます。ハリウッド映画にも、それが見受けられます。

最近の日本は、アメリカに似た風潮もありますが、それでも『スティーブ・ベリー』のような作風の作家は、社会制裁の対象になり、なかなか出現しないのではないでしょうか。

今回の小説の『歴史ミステリー』は、伝説の人物『アーサー王』が実在の人物で、その墓はなんと『アイスランド』に存在するという話になっています。

敵のサクソン人から、墓が凌辱されないようにと、『アーサー王』の家臣(ブリトン人)が、こっそり遺体を『アイスランド』に移し、秘密の場所に埋葬したということになっています。

5~6世紀に、ブリトン人が、『アイスランド』へ進出していたかどうかは、梅爺は分かりませんが、この突飛とも見える発想が、『スティーブ・ベリー』の真骨頂といえるでしょう。

読者の興味をひくためには、『何でもあり』という徹底ぶりです。

| | コメント (0)

2018年8月12日 (日)

スティーブ・ベリーの小説『The Tudor Plot』(3)

『スティーブ・ベリー』の小説は、今までも何冊かブログで紹介してきました。

何冊も読んだということは、『歴史ミステリー』と現在のドラマを組み合わせたストーリー展開に魅せられてきたからです。

今回の小説は、現在の英国王室のスキャンダルを題材にしていて、確かに現実にスキャンダルともいえそうな事件が色々ありましたから、読者は小説のストーリー展開を、『このようなことがあってもおかしくない』と受け容れてしまうのかもしれません。

梅爺も途中で『バカバカしい』と、読むのをやめてしまったわけではなく、覗きメガネで、いかがわしいものをこっそり観るように、最後まで読みとおしたわけですから、作者や出版社の商業主義に、まんまと乗せられた一人です。

しかし、冷静に我にかえれば、やはり『これは、少しやりすぎ』と思いますので、皆さまに推薦はしかねます。

真面目な方からは叱られそうですが、人間には『他人の不幸は蜜の味』『他人のスキャンダル大好き』という不謹慎な面があるように思います。梅爺は自分にもそのような習性があることを認めた上で、それが暴走しないように理性でなんとか抑制する努力をしています。

一方、当事者の心情を思いやって、苦しみや悲しみを共有しようとする『心』も持ち合わせていますので、なんと『精神世界』は矛盾に満ちた厄介なものかと思わざるをえません。

前者は、『安泰を希求する本能』が根にある『優越感』で、相対的に他人より自分が『安泰である』『有利な立場にある』と判断して安堵する行為です。

一方後者は、他人の『心』を『忖度(そんたく)』して、情感を共有し『絆』を確認しようとする(同情する)行為で、これも『群』でないと生きられない人間の本能が働いた結果です。一見『優越感』と『同情』は矛盾するようですが、同じ『安泰を希求する本能』に根差していると梅爺は考えています。同じ根から、矛盾するようにみえる枝葉が生まれてくるという考え方です。

自分は安全な観客席に身を置いて、進行するスポーツゲームや、社会情勢を『批評する(非難する)』のも、『優越感』からした行為なのでしょう。

この小説は『少しひどい』などと云っている梅爺の態度もこれに類します。

| | コメント (0)

2018年8月11日 (土)

スティーブ・ベリーの小説『The Tudor Plot』(2)

この小説のストーリーは、何とも『きわどい』と昨日紹介しましたが、どのくらい『きわどい』のかは、紹介するのも憚られます。

しかし、紹介しないわけにもいきませんので、以下に概要を示します。

『陰謀』の張本人(悪人)は、英国の国会議員(貴族籍)の『ニゲル・ユアストーン』です。息子の妻が、英国王室の王女『エレノア』ですが、息子は不妊症で子供は望めません。『ニゲル・ユアストーン』は、『エレノア』を次の王位に就けようと企み、『エレノア』もこの企みに乗ります。

『エレノア』が王位に就くには、先ず『エレノア』の兄の『リチャード皇太子』と、その息子『アルバート王子』が邪魔になります。

『ニゲル・ユアストーン』は、新聞社を利用して『リチャード皇太子』の女癖の悪さを国民に喧伝し、国民の失望を煽ります。『リチャード皇太子』自身も王位継承の意欲はないことから、『王位辞退(息子のアルバート王子に王位を譲る)』の宣言をするように巧みに誘導します。

一方『アルバート王子』は、容姿、振る舞いとも国民に受け入れられ、国民の期待を担う王室の人気者です。『ニゲル・ユアストーン』は、なんと南アフリカのテロリストを利用して、『アルバート王子』を暗殺抹殺しようとします。

『ニゲル・ユアストーン』は、息子の嫁である『エレノア』と関係をもち、『エレノア』を妊娠させて、息子の子供として認知することを企みます。つまりその子が『エレノア』の後に王位を継いだ時に、義父として権力を振るおうという魂胆です。

『ニゲル・ユアストーン』は新しい『ユアストーン王朝』の権威を『アーサー王』を持ちだして確固たるものにしようとします。

勿論これらの企ては、全て主人公『コットン・マローン』の活躍で水泡に帰し、めでたしめでたしで話は終わります。

いかがですか、いくらなんでも『ひどい(きわどい)』ストーリーでしょう。宮廷を我が物にしようとした、『藤原道長』や『平清盛』でも、こんなひどい企ては思いつかなかったでしょう。

小説を売るために、何でもするという、アメリカ人の能天気な一面なのでしょうが、さすがに今度は梅爺も『おいおい、いくらなんでも限度と云うものがあるでしょう』と云いたくなりました。

アマゾンの読者書評にも、『ひどい小説だ』と批判が乗っています。しかし、多くの読者は、奇想天外のストーリーを楽しんでいるようにも見えます。

『ストーリー・テラー』としての才能には梅爺も感心しますが、現存する人物を貶めるようなモデル小説はいただけないと思いました。

| | コメント (0)

2018年8月10日 (金)

スティーブ・ベリーの小説『The Tudor Plot』(1)

アメリカの歴史推理小説作家『スティーブ・ベリー』の小説『The Tudor Plot(チューダー王朝の陰謀)』を、アマゾンの電子書籍リーダー『Kindle』に原文(英文)をダウンロードして読みました。

多分この本は、日本で書籍として発売されておらず、翻訳本もなさそうですから、電子テキストをダウンロードして読むのが、一番手っ取り早いのではないでしょうか。

現英国王室をモデルに、王位継承の『陰謀』を描いた小説で、登場人物は、名前は変えてあるものの、明らかにモデルが誰かは読者に分かりますから、このような小説は英国王室から名誉棄損で訴えられないのかと心配になるほど、内容は『きわどい』ものです。なにしろ王室のメンバーの一人『王女』が、『陰謀』に加わる『悪人』なのですから。

登場する王室関係者は以下のような顔ぶれです。カッコ内(青字)は、対応する実在の王室メンバーの名前です。

ヴィクトリア2世女王(エリザベス2世女王
ジェームス殿下(
フィリップ殿下:エリザベス女王の夫)
リチャード皇太子(
チャールズ皇太子:最初の妻ダイアナ、現妻カミラ)
エレノア王女(
アン王女:チャールズ皇太子の妹)
アルバート王子(
ウィリアム王子:チャールズ皇太子とダイアナの間の長男)

主人公は、『スティーブ・ベリー』の小説のほとんどに登場する、アメリカ法務省の特殊工作員『コットン・マローン』です。『ジェームス・ボンド』ばりの超人的な活躍が売り物です。今回は、英国王室の王位継承の『陰謀』を見事に暴く役割を果たします。

『スティーブ・ベリー』の小説では、現代のストーリーに、過去の『歴史ミステリー』が絡む構造になっていて、今回は、5~6世紀の『アーサー王』伝説が採用されています。

『アーサー王』は、ブリトン人を率いて、侵攻してきたサクソン人と戦った英雄とされていますが、実在の人物かどうかは現在も分かっていません。

私たちは、『アーサー王』と云えば、『円卓の騎士』『聖剣エクスカリバー』『キャメロット城』などを思い浮かべますが、これらは後代に創られた物語です。

今回は、王位継承を企む悪人が、『アーサー王』が実在の人物であることを墓の発見で証明し、その功績を利用して、王位継承の正当性を国民に訴えようとします。

現在の英国王室は『ウィンザー家』と呼ばれていますが、元は『Saxe-Coburg(ザクセコブルグ)家』で、これは、ビクトリア1世(女王)の配偶者が、ドイツ『Saxe-Coburg家』の出身であったからです。しかし、第二次世界大戦の時にドイツ色を排除するために『ウィンザー家』に改名されました。

陰謀者は、ドイツを先祖とする現王室ではなく、正当な英国王朝の創設を、『アーサー王』を利用して国民に印象付けようということなのでしょう。

このようなことで、英国民が新しい王を認めるのかどうか、梅爺にはどうもピンとこない話です。なにやら無理やり『陰謀』と『アーサー王』を結びつけた感がぬぐえません。

| | コメント (0)

2017年7月 7日 (金)

スティーブ・ベリーの小説『The Jefferson Key』(4)

『憲法』はどの国にとっても『あるべき姿(理念)』を規定したものですから、人間社会を維持するために重要なものです。

特に『アメリカ』は『多民族国家』『州を束ねた連邦国家』としてイギリスから独立するかたちで建国しましたから、『憲法』は特に重い意味を持っています。

国民も『憲法』は、自分たちの先祖が勝ち取って創り上げたものと受け止めていますから、国民にとって『不都合』なことが出来(しゅったい)すれば、『憲法』は改定できるものと受け止めています。

現に『改定』は何度も行われています。勿論、その『改定』は『議会』が決定した後に『州』が『批准』することで成立します。

『憲法はむやみに変えてはいけないもの』という感覚が強い日本とは、かなり事情が違うように梅爺は感じます。

一方、『憲法』で決められてることは、『認める』という論理的な判断も強いことになり、この小説のように建国時に『アメリカ』のために『海賊行為』で敵国『イギリス』『スペイン』と戦った『組織』に、『憲法』に従って『特別の権限を付与された』ということが事実なら、今でもその末裔の『組織』は、『特別の権限』を保有しているというような論理になります。

この小説は、そのような背景を利用して展開しますが、日本人のように『海賊行為は悪いこと』『国家がそれを認めることは悪いこと』と自分の価値観で考えてしまう人にとっては、理解しがたいことでもあります。

日本を舞台としてこのような小説は出現しないのはそのためです。

『憲法』は『約束事』に過ぎないので、不都合なら『改定する』ことに抵抗が少ないアメリカ人と、『憲法』を『金科玉条』として簡単に変えてはいけないと考える傾向が強い日本人と、どちらが『正しい』かなどと議論することはあまり意味がありません。

しかし、日本人も、世界にはいろいろな国があり、それぞれ異なった歴史、文化、価値観を保有しているという『違い』は認識する必要があります。

この小説は、日本人には『そんなことがあるのか』と疑いたくなる内容ですが、アメリカ人には『起こりうる当り前のこと』なのかもしれません。

小説は面白く読みましたが、『アメリカ』は『日本』とは違うという印象が、強く残りました。

| | コメント (0)

2017年7月 6日 (木)

スティーブ・ベリーの小説『The Jefferson Key』(3)

世界の国家は、どれも細かく見れば、成立時の特殊な事情があったり、継承している歴史や文化が異なりますから、現状の『国の運営方式』はそれぞれ違いがあります。 

多くの人は、外国の『国の運営方式』などについて、知識を持ち合わせませんから、他国も自国と同じように運営されていると勘違いしがちです。 

特に『アメリカ』は、大国であり、日本人も身近に感ずる国のひとつで、情報も多いために『アメリカのことは分かっている』と思いがちですが、実は分かりにくい国の部類に属すると梅爺は感じています。 

一つは自治権限の強い『州』を束ねた『合衆国』であるということでしょう。アメリカの『州』は、日本の『県』とはかなり違います。 

日本の『県』は、明治政府が、お上の意向として割り振った、いわばお仕着せの区画割りですが、アメリカの伝統ある『州』は、建国以前に、『独立国』に等しい自治を保有していたコミュニティです。 

広大な国土を持つアメリカが、『州』による一種の連邦国家体制を採用し、『州』にかなりの自治権を与えたことは、民主国家の立場を維持する上で必要なことであったように思います。 

しかし、何事も長所が短所になりますから、『中央政府の支配』と『州の支配』が二重構造になり、時に双方の間に軋轢が生じたりします。このために逆に『大統領』に権限が集まる仕組みも必要であったのでしょう。 

『司法(裁判の仕組み)』『犯罪への対応(警察の仕組み)』が二重構造になっている上に、かなり基本的な人権にかかわる『法』も、『州』によって異なったりします。たとえば『同性愛』同士の『結婚』を認める、認めない、『生物進化論』を学校で教えることを認める、認めないなどということも『州』によって対応が異なります。

更にややこしいのは、『国家安全』『対テロリズム』に関わる『情報機関』が、『CIA』や『FBI』ばかりではなく、国防総省やその他主要省庁の下部組織にも存在し、各々が功を競ったりして、必ずしも連携していないために、問題を起こすことがあることです。これらの仕事に従事している人間の数も、日本では想像できないほどの数に上ります。

この小説でも、善玉の『情報機関』と悪玉の『情報機関』が対立し、悪玉は『拉致』『殺人』も辞さないといった非道な悪役として登場します。

国家には、当然のこととして大規模な『諜報機関』や『情報機関』が存在するとアメリカ人が受け止めているとしたら、日本人の感覚とは異なります。

『自由な国』『民主主義を信奉する国』という一面の裏に、『国益優先』という大義名分で、手段を選ばず行動する強大な『諜報機関』『情報機関』が存在するということですから、『アメリカ』は『素晴らしい国』であり『恐ろしい国』です。

もっとも『人間』と同じで、生きていくためには、『きれいごと』だけではやっていけないという『現実』があるとしたら、『きれいごと』だけで済まそうとする日本人は『能天気』なのかもしれません。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧