2018年11月28日 (水)

Dan Brown の小説『Origin』(12)

犯人が判明し、『ヴァルデスピーノ司教(カソリック)』『ジュリアン皇太子』『パルマリアン教会』への嫌疑は晴れ、『皇太子』と『女美術館長(アンブラ・ヴィダル)』の仲は元に戻り、将来を誓い合います。旧弊にとらわれない次の『国王』『王妃』の誕生が約束されたということになります。

関連する犯罪(暗殺)に関与した『人工知能』は、プログラムに則って『自己消滅』します。

『国王』は臨終を迎え、特別の仲(プラトニックな同性愛)であった『ヴァルデスピーノ司教』は後を追って自ら命を絶ちます。

物語はめでたく終わりますが、『科学者(犯人)』の『宗教はやがて見放され、科学が支配する』という未来予測が読者へ突きつけられたままで残ります。

梅爺は『宗教対科学』という比較で、人間や人間社会を論ずるのは単純すぎるように感じます。

人間が『生きる』ことに大きく関与しているのは、『物質世界』の『摂理』であることは確かで、これは『科学』の領域ですから、将来『科学』の重みが一層増すことは間違いありませんが、一方『脳』が創り出す『精神世界』の抽象概念が生み出す『価値観』も『生きる』ことへ少なからず関与していることも確かですから、『精神世界』の重要性も減ずることはないと考えられます。

『精神世界』の活動の典型的な一つである『芸術』などは、『科学』の隆盛で衰退するようなことはないでしょう。

しかし、従来『精神世界』の活動の中で重要な位置を占めていた『宗教』が、従来通りに『人間』や『人間社会』から受け容れられ続けるかどうかは不透明です。少なくとも従来通りとはいかずに影響力が減少するのではないでしょうか。

それは、『宗教』が権威を保つために、本来『物質世界』で論じられるべき事象にまで、『これが真実』と『虚構』を提示し、それを無条件に『信ずる』よう信者に求めてきたことが、段々理性で受け入れられにくくなるからです。中世の人たちに通用した話は、現代人には通用しません。『科学知識』の量が全く違っているからです。

『天地創造』『エデンの園』『アダムとイヴ』『処女懐胎』『死者復活』などは、現代人の理性では受け入れられにくいことです。

『煩悩を解脱する努力』『周囲に愛で接する』などという『生き方』に関する『宗教』の『教え』は、『精神世界』にとどまった話ですから、現代人にも通用します。しかし、『虚構の出来事』を『事実』として押し通すことは無理な話です。

『宗教』が、生き残る道は『教え』と『出来事』を区別し、『出来事』は『科学』に任せて、『教え』だけに徹することのように思いますが、『出来事』の否定は『教義』全体の否定につながりますので、難しいことには違いがありません。

将来『精神世界』が重視する『価値観』のなかで、『宗教』がどれだけの位置を保ち続けられるかが問題です。『虚構の出来事』を無条件に『信じろ』と説くだけでは、衰退は避けられないのではないでしょうか。

しかし『精神世界』から、『芸術』『道徳』『倫理』が失われていくことはないでしょう。『科学』は重要ですが、『科学』だけが『生きる』ことを支配しているのではないことを、私たちは認識すべきです。

『Origin』という面白い小説を読んで、梅爺は一層そのことを強く感じました。

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2018年11月27日 (火)

Dan Brown の小説『Origin』(11)

小説では、『証拠』の公開で、世界中が論争に巻き込まれ、多くの人が『宗教』と『科学』の問題を、改めて考えることになります。 

『無神論者』は、鬼の首を取ったように『それみろ』と叫び、『神による天地創造』を信ずる人は、一層感情的にこの『証拠』に反撥します。

人間社会には、『伝統』『習慣』などがあり、慣性がありますから、すぐに現状の『宗教』が全否定されるようなことにはなりませんが、将来人類は『宗教』離れをする可能性はあるように梅爺は思います。現代人は『古代エジプトの神々』『古代ギリシャの神々』をすでに信仰の対象にしていないことが、それを示唆しています。 

読者に自ら『考えてほしい』というのが作者『Dan Brown』の真の意図なのでしょう。

小説は結末へ至り、ついに一連の騒動の首謀者(犯人)が明らかになります。

伝統的な『探偵小説』では一般にタブーとされていた、『被害者が犯人』というプロットが採用されています。

つまり、全世界の人がインターネットで中継されている『科学的新証拠発表会』を注視する中で、暗殺者によって殺害された発表者の『科学者』自身が、一連の事件を周到に仕組んだ『犯人』であったという破天荒な結末です。

人類の起源について決定的な『科学的新証拠』を発見した『科学者』は、従来からの強い持論である『宗教は人類に有害な存在』を具体的な手段で示すために、『科学者暗殺の黒幕は宗教団体(その関係者)』という疑惑を駆り立てる筋書きをねつ造し、実行したことになります。

自分の命と引き換えに、壮大な復讐を果たすというような話ですが、『科学者』自身が深刻なガンに犯され、死を覚悟して、どうせ死ぬなら『宗教』を巻き添えに貶めようとしたということなのでしょう。『科学者』の母親が『宗教』に洗脳され、不幸な死に方をしたということも復讐の背景にあることが明らかになります。

『暗殺』以前、以後も『科学者』の思惑通りに事件を進行させるには、有力な『共犯者』が必要になりますが、この場合の『共犯者』は、生身の人間ではなく『科学者』が創造した『人工知能(ウィンストン)』であるという、巧妙な設定になっています。

『人工知能』が犯人の一人という設定は、『Dan Brown』らしい、現代社会の関心事と科学知識を反映したものです。『犯人』の死後も、『犯人』の意図を実行する『共犯者』が存在するという見事なアイデアです。

暗殺の実際の実行犯『元スペイン海軍提督』は、妻子の命ををセビリアの『教会テロ』で奪われ、『敵を愛せよ』などというカソリックの教えに反抗して、原理主義宗派『パルマリアン教会』の信者になります。

この実行犯の心理に便乗し、『教会テロ』で妻子を殺したのは、『科学者』の『無神論』を支持するグループであると洗脳して、『科学者』への復讐に奮い立たせたのは、『リージェント』というインターネットで声の指令を送ってくる謎の人物でしたが、その正体は『科学者』の創造した『人工知能』であったということになります。

『人工知能』は、一方で『教授』等の逃亡を手助けするようにふるまいながら、一方では『元スペイン海軍提督』を唆(そそのか)して『教授』の命も狙わせるという、多重人格のように振る舞うところが読者を混乱させます。

『科学者』は生前、事件のすべてを詳細に予見して『人工知能』に指令を出したのか、『科学者』の死後は『人工知能』が自主判断で行動したのか、梅爺には判然としませんでした。いずれにしても『人工知能(コンピュータ)』が犯罪の一端を担ぐという設定は、空恐ろしい話です。

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2018年11月26日 (月)

Dan Brown の小説『Origin』(10)

この小説では、昨日紹介した地球環境で、単純構造から複雑構造への変容は起こり得るという仮説で、『ユーリーとミラー』の実験を超高速の『量子コンピュータ』を用いて約40億年の時間経過をシミュレーションすると、『DNA』が出現し、『単細胞生物』が出現し、やがて高等生物が出現することが確認できたという筋書きになっています。 

もっともらしい話に見えますが、この強引な論理には無理があると梅爺は感じました。『DNA』は還元的な化学反応(脱水反応)ですから、海中の環境で出現したとは考えにくいからです。しかし、小説なので『何でもあり』といわれれば、それまでです。一種のSF小説と割り切ればよいのでしょう。 

生命体』の先祖は、『宇宙』から『地球』へ飛来したものという『仮説』もありますが、これも論証は出来ていません。仮にそうだとしても、『宇宙でどのように生命体が出現したのか』という謎が残り、問題の先送りするにすぎません。 

この小説に話を戻すと、『科学者』は、地球での『生命体』の出現とその進化を、コンピュータ・シミュレーションで再現させ、『我々はどこから来たのか』という設問に答えたことになります。つまり、『神』の力を借りなくても、自然界はその摂理だけで、『生命体』を出現させることができると言っていることにほかなりません。

さらに『科学者』は、未来についてもコンピュータ・シミュレーションで予測し、『我々はどこへ行く(向かう)のか』という設問に対しても答えています。

その内容は、『生物としての人間が、科学を応用したモノを体の内外に装着し、ハイブリッド人間(サイボーグ人間)という新種の生物へ進化する』というものです。

現在でも『人間』は、メガネ、入歯、補聴器、心臓のペースメーカーまどを装着して、不都合を補っていますが、もっともっと高度なモノを装着して、多くの不都合を克服した『新種の人間』に進化するという話です。

たとえば『がん細胞』だけを攻撃する、『ナノ・ロボット』を血液内へ注入したり、『脳』の思考や記憶を補佐するための『コンピュータ』を、体内へ埋め込んだりすると言った話です。

確かに、これらは『可能性』がある話ですが、『生物としての人間』を科学の力で『より優れた特性へ変えた新種の人間』が構成する社会は、どのようになり、個人は幸せなのかといった多くの疑問を抱きます。

この小説では、『がん』で自らの死を覚悟した『科学者』が、『新種の人間』の出現で、争いのない、格差の少ない平和な社会を作ってほしいと明るい未来を期待した最後のメッセージを述べます。

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2018年11月25日 (日)

Dan Brown の小説『Origin』(9)

地球の歴史で起きた事象の中で、『物質』や『生命体』が、単純な組織構造から複雑な組織構造へ変容(進化)できたのは何故であろうという疑問があり、この疑問への解答は見つかっていません。

『有機化学物質』が『低分子構造』から『高分子構造』へ変容する事象や、『単細胞生物』から『人間』のような複雑高度な『多細胞生物』に変容(進化)する事象がこれに該当します。

『生命体』にとって必須な『DNA』構造の高分子物質が、何故単純な低分子物質から出来上がったのかが説明できなければ、『生命体』出現の謎にも迫れないからです。

科学者を悩ませているのは、『熱力学の第二法則』という物理法則として定説になっている考え方に、単純構造から複雑構造への進化という事象は矛盾するからです。

『熱力学の第二法則』は『エントロピー増大の法則』ともいわれ、自然界を永い目で見れば、複雑な構造は、単純な構造へ変容し、その時『エントロピー』は増大するという考え方です。

氷を20度の室温で放置すれば、融けて水に変わる(複雑な個体構造から単純な液体構造へ変わる)というような例がわかりやすい話です。

自然界で、単純構造が複雑構造へ変容することが明らかに起きているわけですから、局所的に『エントロピーを減少させる事象』があり、それには必然的な理由がなくてはなりません。

この小説では、この理由として、MITの若い科学者の『仮説』を採用しています。その『仮説』は、『自然界(物質世界)』に存在する究極な指令は、『エネルギーの放出量を増大させよ』というものであるという内容です。

『熱力学の第二法則』も、一般的には成り立ちますが、それよりも上記の究極な指令が強力に働く条件では、成り立たないということなのでしょう。

『無機質』な物質よりも『生命体』の方が、繁殖による個体数増加で、『エネルギーの放出量』は増大しますから、自然環境で『無機質』な物質が、複雑な構造へ変化し、やがて『生命体』に変容するのはあり得る話であるということになります。

梅爺は前にブログで『生命誕生(中沢弘基著)』という本を紹介し、中沢先生の『地球は誕生以来、熱を宇宙空間へ放出し続けている。つまり地球環境のエントロピーは全体として減少している。したがって地球環境では、単純構造が複雑構造へ変容する(進化する)ことが起こる』という『仮説』も紹介しました。

この小説の『自然界の究極指令』説よりも中沢先生の『仮説』の方が説得力があるように梅爺は感じます。

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2018年11月24日 (土)

Dan Brown の小説『Origin』(8)

『教授』と『女性美術館長(将来のスペイン王妃候補)』は、『王宮警護部隊』が差し向けたヘリコプターで『サグラダ・ファミリア教会』から脱出し、『科学者』の研究基地であるコンピュータ施設が、バルセロナ市内にあることを突き止め、潜入します。

なんとコンピュータ施設は、現在では使われていないゴシック様式のカソリック教会の中にありました。『無神論者』であった『科学者』が皮肉をこめて選んだ場所なのでしょう。

コンピュータは『科学者』が開発した大規模な最新の『量子コンピュータ』でした(梅爺注:実用的な量子コンピュータはまだ現時点では存在しません)。

コンピュータに指定の『47文字のパスワード』を入力し、『科学者』が『グッゲンハイム美術館』で発表しようとしていた『証拠』の内容が、ついにインターネットで全世界へ配信されます。

『証拠』は、古代の地球環境(大気ガス、海水、気温、落雷放電)で、アミノ酸などの生物に必要な有機化学材料が生成され、地球環境を支配している物理法則、科学法則だけでやがて『生命体』に変容することを、スーパーコンピュータのシュミレーション(数億年の事象を、短時間に短縮)で実証したものでした。

地球に存在する素材と、『自然法則(摂理)』だけで、『生命体』は出現するという話ですから、『天地創造』といった『神』の関与は否定されることになり、宗教関係者がこの『証拠』公開を危惧して、『科学者』を暗殺したという推理が一層深まります。

古代の地球環境で、生物に必要な有機物質が生成されるという実験としては、1953年アメリカの二人の科学者『ユーリーとミラー』が、ある前提条件で、生命体の基礎となる単純なアミノ酸の生成に成功して有名になりました。『』ユーリーとミラー』は、『生命体』そのものの出現を期待しての実験でしたが、その意味では失敗に終わりました。しかし、現在では彼らが想定した環境条件は、必ずしも古代の地球環境を忠実に反映していないという反論があり、『生命体』出現の決定的な『証拠』にはつながらないとされています。

現在科学者にとって現在解けない謎は、高分子有機化学物質が『生命体』に変容するプロセスで、いくつかの『仮説』はありますが、『定説』にはなっていません。

地球環境の条件の中だけで、『生命体』は出現しうるという『仮説』は、多くの科学者が支持していて、梅爺も『そうであろう』と推測していますが、決定的な論証は出来ていません。この小説で、『ユーリーとミラー』の実験を肯定し、『ユーリーとミラー』が気付かなかった条件を加味すれば、『生命体』の出現は可能であるという筋書きになっています。この条件というのは、『エントロピー』に関するもので、この話には梅爺も興味をそそられました。

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2018年11月23日 (金)

Dan Brown の小説『Origin』(7)

『科学者』が、人類の起源、人類の将来を特定する『証拠』をみつけ、世界へ公表しようとして暗殺されました。

『証拠』を事前に知っていた宗教関係者3人のうち、『ヴァルデスピーノ司教(カソリック)』だけが生き残っていること、刺客(元スペイン海軍提督)の背後に『パルマリアン教会(原理主義の新宗派)』があることを読者は最初のうちに知らされますから、『カソリック』または『パルマリアン教会』が暗殺の黒幕であろうと推理します。

読み進むうちに、一層その嫌疑が深まるような展開になります。仮に最後にどちらかが黒幕ということになれば、実存の組織の名誉棄損として作者は訴えられかねません。さすがに『そうではない結論』が用意されています。『何でもあり』のきわどい小説ですが、『最後の一線』は心得ているということになります。

『科学者』暗殺事件の直後、『ヴァルデスピーノ司教』は、マドリッド王宮から『皇太子ジュリアン』を拉致して、姿をくらまします。

『司教』と『皇太子』に嫌疑が及ぶことを危惧した『王室広報担当』は、『王宮警備の主任』へ嫌疑を転嫁して逮捕し、逃亡中の『教授』と『女性美術館長』に関しては、『教授』が『女性美術館長』を人質にして逃亡していると偽の発表します。

『ヴァルデスピーノ司教』と『皇太子』は、静養先から抜け出してきた『現スペイン国王』が指定する場所で『国王』と密会します。

病状から死を覚悟している『現スペイン国王』は、最後の別れと遺志を『皇太子』へ伝えます。なんと『国王』と『司教』は、同性愛の恋人同士であったことが告白され、『国王』と『司教』は、『皇太子』が『国王』に就任したら、『古い伝統にとらわれずに国家を治めるように』と諭します。もちろん、同性愛はプラトニックな関係なのですが、従来『同性愛』を認めてこなかった『カソリック』のことを考えるとこれは、きわどい話になります。読者の好奇心を満たすなら『何でもあり』のアメリカ人らしいストーリーの典型例です。実在の人物なら名誉棄損になりかねませんが、架空の人物であると言う理由で許されると踏んでいるのでしょう。

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2018年11月22日 (木)

Dan Brown の小説『Origin』(6)

『ラングドン教授』と『アンブラ・ヴィダル(女性美術館館長)』は、『科学者』のスマートフォンを現場から持ち去り、それを介して『人工知能ウィンストン』の指示に従いながら、ビルバオからバルセロナへ逃走します。『科学者』のプライベート・ジェットや特別仕様の車が逃走に使われます。

バルセロナで、『科学者』が居住していた『カサ・ミラ(アウディの設計した建築物)』の最上階へ潜入し、『証拠』を公開するための『47文字のパスワード』を探します。そして浴室に残されていた『薬』から、『科学者』が深刻なガンを患っていたことも知ります。

このパスワードは、『科学者のお気に入りの予言的な詩の一節』であることだけが手掛かりで、ついにその詩の作者は『ウィリアム・ブレーク』であることを突き止めます。『ウィリアム・ブレーク』は18世から19世紀を生きた実在のイギリスの詩人、銅版版画作家で、『宗教』に懐疑的な人物でした。

『科学者』の『ウィリアム・ブレーク』に関する蔵書は、すべて『サグラダ・ファミリア教会』の寄贈され、地下霊廟に、特定のページを開いて展示されていることが分かり、『教授』と『女性美術館長』は、今度は『サグラダ・ファミリア教会』へ向かいます。

『カサ・ミラ』は警察に包囲されていましたが、『女性美術館長:未来のスペイン王妃候補』を保護救出のために差し向けられた『王宮警備』のヘリコプターで脱出します。『女性美術館長』は救出に来た二人の警備員に命令してヘリコプターは『サグラダ・ファミリア教会』へ向かいます。

『サグラダ・ファミリア教会』では『ペーニャ神父』の助けを借りて、二人は地下霊廟で『ウィリアム・ブレーク』の該当の『詩』を見つけ、ついにパスワードを特定します。

パスワードは『"The dark Religions are departed & sweet Science reigns"(暗黒の宗教は見捨てられ、すぐれた科学が支配する)』でした。この文章は46文字ですが『&』をラテン語の『et』に置き換えることで47文字になると『教授』は推論します。

一方、『科学者』を『グッゲンハイム美術館』で暗殺した刺客『ルイス・アヴィラ(元スペイン海軍提督)』は、背後の命令者で『Regent』と名乗る謎の人物の指示で、バルセロナへ向かい『サグラダ・ファミリア教会』へ潜入して、『教授』と『女性美術館長』を警護していた『王宮警備員』二人を殺害し、『教授』の命も狙います。

『教授』は暗闇で刺客を待ち伏せし、体当たりで刺客を階段の下へ突き落とします。刺客は死亡しますが、『教授』も意識を失います。

意識を取り戻した『教授』は、『科学者』の残した『証拠』の一般公開へ踏み切るために、一層の決意を固めます。

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2018年11月21日 (水)

Dan Brown の小説『Origin』(5)

天才的コンピュータ・サイエンティスト『エドモンド・カーシュ(アメリカ人であるが、バルセロナに在住)』は、『我々はどこから来たのか。我々は何者か。我々はどこへ行くのか。』という人類にとって根源的な『問い』に応える科学的な『証拠』を見つけたことを公に宣言しようとします。

しかし、彼は宗教界の重鎮たちに、事前にその内容を通告し、反応を確かめようとします。

一般公開予定の前に、『世界宗教会議(主要な宗教の代表メンバーが国際的に集う会議)』のメンバである、『ヴァルデスピーノ(スペイン・カソリック司教)』『イェフーダ・コーベス(ユダヤ教ラビ)』『サイド・アルファディ(イスラム教神学者)』の3人と、『カタロニア修道院』で密かに会い『証拠』を提示します。そして、この『証拠』を一カ月以内に一般公開すると通告します。

三人の宗教関係者は、『宗教』のすべてが否定されると感じ動揺します。『一か月以内』は実は『三日後』であることがその後判明しますが、不可解なことに公開前に、『ユダヤ教ラビ』と『イスラム教神学者』は何者かに暗殺されてしまいます。『証拠』に接した3人のうち2人が殺された(消された)ことになります。

『カソリック司教』は『公開を止めるように』という、要請とも脅迫ともとれるボイス・メールを『科学者』へ送りますが、『公開』は、ビルバオの『グッゲンハイム美術館』を貸し切りにして挙行されることになります。

『公開』には、数百人の『招待客』が出席し、『招待客』には、全員に『ヘッド・フォン』が配布され、人工知能『ウィンストン』の各人向けにカストマイズされたガイドを受けます。

『招待客』の一人に、『科学者』のハーバード大学時代の恩師『ラングドン教授』が含まれていて、二人は『公開』セレモニーの前に会って会話を交わします。

いよいよ『公開』セレモニーが始まります。『招待客』は大規模な『仮想現実』の中に身を置いて、映像で流れるプレゼンテーションを視聴します。このセレモニーの様子は全世界へインターネット中継され、『証拠』もこの手段で公開されることになっていました。

しかし、『証拠』の公開の直前に、『科学者』は、刺客(元スペイン海軍提督)によって暗殺されてしまいます。現場に居合わせた『ラングドン教授』と『美術館館長(女性)』は、刺客を差し向けた黒幕は、『科学者』のコンピュータに収納されている『証拠』も消滅させようとしていることに気づき、それを守るため、『科学者』に代わって公開に踏み切るために現場から逃走します。しかし、その行動で『容疑者』と疑われ、『王宮警備組織』『警察』から追われる身になります。

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2018年11月20日 (火)

Dan Brown の小説『Origin』(4) 

『Origin』という小説の舞台には『スペイン』が選ばれています。

これは『Dan Brown』のストーリー・テラーとしての才能と広範な知識を顕著に示しています。『スペイン』を舞台に選んだことを梅爺が何故見事と思うかの理由は以下です。

(1)ヨーロッパ屈指の『カソリック』信者を擁する国である。人口の半数以上が『神』の存在を信じている。『カソリック』の『王室』および政治への影響力は強い。『科学』と『宗教』の対立を描くには、格好の国である。
(2)保守性が強い文化の中で、社会改革を望む『無神論者』の若者層が増えている。『王室』も改革に無関心ではいられない状況になりつつある。
(3)対極的に、超保守的、原理主義的な宗派活動も存在し、中でも『パルマリアン教会』は、ローマ・バチカンの『カソリック』から独立した立場をとり、独自の『法王』を擁している。
(4)建築家『ガウディ』の思想は『科学的』でもあり『宗教的』でもあるように見える。この小説にはうってつけのものである。
(5)『スペイン』の観光名所を登場させることで、読者の興味を引き付けることができる。『マドリッドの王宮』『カタロニアの修道院』『ビルバオのグッゲンハイム美術館』『バルセロナのカサ・ミラ(ガウディ設計の建物)』『バルセロナのサグラダ・ファミリア教会(ガウディ設計の教会)』が、主要な役目を果たす場所として小説に登場する。

主要な登場人物を以下に列挙します。この顔触れを見ただけで、小説の内容に興味を覚えていただけるに違いありません。

● 『ロバート・ラングドン』教授(ハーバード大) 『Dan Brown』の小説の定番の主人公。
● 『エドモンド・カーシュ』天才的コンピュータ・サイエンティスト、未来学者。
● 『ヴァルデスピーノ』スペインのカソリック司教。国王の信頼が厚い。
● 『アンブラ・ヴィダル』美貌のグッゲンハイム美術館女性館長。皇太子『ジュリアン』から求婚された未来のスペイン女王候補者。
● 『ジュリアン』スペイン皇太子。
● 『ウィンストン』『エドモンド・カーシュ』が創造した人工知能。声だけのロボット。
● 『ルイス・アヴィラ』元スペイン海軍提督。妻子を教会テロで失う。『エドモンド・カーシュ』の直接的暗殺犯。
● 『ゴルザ』マドリッド王宮警護責任者
● 『モニカ・マーチン』マドリッド王宮広報担当責任者(女性)。
● 『ペーニャ』サグラダ・ファミリア教会神父。

人物は当然小説だけの仮想の人物ですが、場所、建築物、組織などはすべて実在するものですから、一般の読者は好奇心を煽られます。『王室』『カソリック』に関してきわどい話が展開しますから、スペインの人たちや関係者にとっては心穏やかならぬ小説であろうと想像できます。

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2018年11月19日 (月)

Dan Brown の小説『Origin』(3)

『理』により推論する限り、『物質世界』に実態としての『神仏』は存在しないと梅爺は考えますが、それはいくつかの『前提』を重視した推論ですから、もちろん梅爺が理解できていない『前提』があれば、結論は異なったものになりえます。 

つまり、『物質世界』に『神仏』は存在しないことを、普遍的に梅爺は証明できません。基本的姿勢は『無神論者』といわれる人たちと同じですが、厳密にいえば『わからない(証明できない)』わけですから『不可知論者』になります。 

一方、『精神世界』の中に共有されている『神仏』という『抽象概念』の存在とその意義については理解できますから、世の中の『無神論者』よりは柔軟です。 

この梅爺の立場は、なかなか理解されません。多くの場合『存在しないと思うと言いながら、その抽象概念の意義は認めるなどというのは甚だしい矛盾だ』と批判されます。これは『物質世界』と『精神世界』の関係が理解されていないからです。『神仏』は『精神世界』でのみ意味を有します。 

梅爺の推論が正しければ、もし地球上から人類が消え失せれば、『神仏』という概念も消滅し、『物質世界』は『神仏』のない世界であり続けるであろうということになります。地球上に『人間』が出現するまでは『神仏』は存在しなかったとすれば、もとへ戻ったことになります。『神』は『人間』を創造したのではなく、『人間』が『神』を創造したという畏れ多い推論です。 

『人間はどこから来たのか、人間は何者なのか、人間はどこへ行くのか』は、ゴーギャンがタヒチで描いた絵画のタイトルとして有名です。この問いは、歴史上、多くの哲学者たちを悩ませてきました。 

中世以前の人類は、現代人が保有するような『科学知識』を持ち合わせていませんでしたから、哲学者は四苦八苦しました。

現代の科学者は、上記の『問い』に、あるレベルの科学的な『答』を提示しています。

『我々はどこから来たのか』・・地球上に存在した物質(もとは宇宙の素材)を利用して偶然『生命体』が出現した。『生命体』は生物進化して『人間』が登場した。
『我々は何者か』・・地球上に存在する生物進化で登場した生物の一種。
『我々はどこへ行くのか』・・『個体(個人)』は死んで、素材に戻る。それ以外は何も残らない。『種』は地球環境が許す限りにおいて世代交代で存続し続ける。ただし、都合がよい環境は未来永劫続かないので、いつかは『種』も絶滅する。

ただ『我々はどこへ行くのか』については、『科学技術で強化されたサイボーグ(新種人類)への変身』『地球外の惑星への移住』などという、SFまがいの話も登場することがあります。

実に『味気ない答』です。ここには『神(仏)』『神による天地創造』『霊の不滅』『輪廻転生』『あの世(天国・地獄)』『最後の審判ですべての死者が復活』などという話は一切登場しません。

『Origin』という小説は、現代人が抱え込んだ、『宗教』と『科学』のあまりにも違う『説明』内容の矛盾を正面から取り上げたものです。

作者は、公平に描こうとしていますが、作者自身は『科学有利』という立場であることが、うかがえます。

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