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2020年1月24日 (金)

江戸の諺『客すりおろす』

江戸の諺『客すりおろす』の話です。

現代ではあまり聞かない表現ですが、客をよってたかって喰い物にするというような意味なのでしょう。

金持ちでちょいと人の良い客を、おだてたりすかしたりして、出費させる光景が目に浮かびます。

原典の『諺臍の宿替』には、『幇間(たいこもち)』『仲居』『芸子』が、舟遊びでよってたかって『旦那』にたかる小噺が掲載されています。『旦那』も鷹揚(おうよう)に、『両足まではすりおろしても良いが、それ以上は立つところが無くなるからやめておくれ』などと対応しています。

この『旦那』は、自分が『すりおろされている』ことを承知で、その状況を楽しんでいるところがあり、このような『粋な関係』が江戸の人たちの好みであったのでしょう。

人は、他人から『褒められたり』『良く言ってもらったり』すると、『嬉しくなる』習性を有しています。『安泰を希求する本能』が満たされるからです。

子供の教育や、スポーツの指導でも『褒める』方が『叱る』よりも効果があると言われるのはこのためです。

上手な先生やスポーツのコーチは、『叱る』時でも、直接ではなく『あなたは素晴らしい。でもここを直せばもっと素晴らしくなる』などと表現して、マイナスをプラスに変えてしまいます。

『幇間(たいこもち)』などというのは、世界にあまり類をみない職業ではないでしょうか。外国のおどけ役『ピエロ』は、何か物悲しい雰囲気ですが、『幇間』はあっけらかんとしています。

『旦那』も『幇間』のお追従を承知の上で、『楽しむ』わけですから、『旦那』も『幇間』も舞台の上で自分の役どころを理解して『演じている』ようなものです。舞台を降りて、日常の世界に戻れば、両方とも普通の人間に戻るということになります。

しかし、世の中には、日常の生活の中で、『お追従』『ゴマスリ』をする人も沢山います。

『独裁者』の周りには、『イエスマン』だけが配置されることになりがちです。苦言や諫言(かんげん)をすれば、左遷させられたり、時には処刑されたりするからです。

『科学』や『数学』の世界では、普遍的に『正しい』事象は存在しますが、人間の『精神世界』の価値観が絡む世の中の事象の大半は、普遍的に『正しい』などと言えるものは、ほとんどありません。

『自分の考え方、感じ方』が『適切である』と、『信ずる』ことは、生きる上で重要なことですが、それを『普遍的に正しい』と誤解することは避けるべきです。

『他人の考え方、感じ方』に耳を傾ける度量が必要になります。

他人に合わせる必要はありませんが、他人と自分の違いを『認識』することは、人間関係の基本条件です。

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