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2019年9月 9日 (月)

江戸の諺『節季のからくり』

江戸の諺『節季のからくり』の話です。

江戸時代は、盆や暮れといった『節季』に、商売人が、決算をする習わしになっていました。『掛け売り』で対応していた客に、『掛け売り金』の一括支払いを求めることが行われました。

『掛け売り』という形式が、日常的に行われていたことは、日本の文化の一面を表しているような気がします。

その都度、現金で決算する方が、商売人にとっても好都合なことであるはずですが、客の懐具合を斟酌(しんしゃく)し、相手を信用するというリスクを冒して『掛け売り』を容認する風習は、日本人の『人間関係』に対する価値観が反映していると思うからです。この世はお互いの信頼で成り立っている、『お互い様』という考え方が強いということです。

英語で『お互い様』を表現するのは難しいような気がします。『in the same boat(同じ船に乗る:運命共同体)』『face the situation with the same problem(同じ問題を抱えて事に当たる)』などがありますが、少々理屈っぽくてニュアンスも違うように感じます。

『借金が払えない人』にとっては、節季は魔の季節で、トンズラしたり居留守を使ったり病気を装ったりとあの手この手で、取り立てを逃れようとし、一方取り立て側は、心を鬼にして、支払いを迫ることになります。

この様子を『節季のからくり』と表現しているのでしょう。盆暮れを無事に迎えられるかどうかは庶民にとって大変なことであったということです。

『からくり』は、機械じかけの仕組みのことで、江戸時代には『からくり人形』『覗きからくり』などの、見世物がありました。手品の『タネ』も、『からくり』と表現されました。

『節季のからくり』の『からくり』は、借金とりたての裏側で展開する、知恵をこらしたあの手この手の攻防を比喩的に表現したものなのでしょう。

日本語には『節目を付ける』などという表現もあり、過去を清算して、新しい気持ちで、生活を始めるような時に使います。

『心機一転』などという言葉もよく使われます。

人間が生きていく上で、このような『リセット』『再スタート』は、重要な意味を持つように感じます。『新年』『改元』『祭り』などという行事が特別な意味を持つのはそのためでしょう。

何度もブログに書いてきたように、このような『主観的な価値観を他人同士でも共有できる能力』が、人間という生物の大きな特徴です。

この特徴ゆえに、人類は、『宗教』『芸術』をはじめ、『文明』を創りだしてきました。

犬や猫が、節季に『からくり』を弄して、大騒ぎするようなことはありません。

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