« 梅爺創作落語『極楽詣で』(5) | トップページ | 梅爺創作落語『極楽詣で』(7) »

2018年12月 4日 (火)

梅爺創作落語『極楽詣で』(6)

(阿弥陀如来)『八五郎さんにもご足労をおかけしましたな。亡くなった方がこちらへ来て、盆には里帰りしますが、霊者になった者はこの世の人には姿が見えませんから気配を感じていただくしかありません。この世で語られている極楽や私(阿弥陀如来)のことは、想像だけが膨らんでしまうらしく、必ずしも実態でないことが吹聴されているようで、案じておりました。八五郎さんには、亡くならずにこちらにおいでいただいたわけですから、是非ありのままの極楽や私を観ていただいて、もう一度この世へお戻りになったら、その話をこの世の人たちにお伝え願いたいのです』
(八五郎)『へぇ、そいつはあっしには大役で、大変な重荷でございますが、なんとかお役にたつようにいたします』
(阿弥陀如来)『それでは、又兵衛さん、後のことはお願いしますよ。八五郎さん、その前に私に何かお聞いておきたいことはございますか』
(八五郎)『あっしは無学なもんでございますから、トンチンカンなことをお聞きするかもしれませんが、こちらはあの世の極楽だとして、地獄はどちらにあるんでございましょう。万福寺の和尚は、功徳を積まないとお前さん地獄へいくことになりますぞなんぞとやたらに脅かすもので、いつも気になっていたんでございますよ』
(阿弥陀如来)『残念ながら私も地獄については何も存じません。もちろん地獄をみたこともありません。多分この世の人たちが想像して考え出しただけの場所で、そのようなところはないのではありませんか』
(八五郎)『そいつはどうも驚きましたな。帰ってその話を和尚にしたら腰を抜かすかも知れません。それにしても極楽には、次々に亡くなった霊者が送り込まれてくるとすると、段々手狭になるなんてことはないんでございますか』
(阿弥陀如来)『極楽には、広い狭い、長い短い、遠い近い、初め終わり、などというこの世でいう尺度はございません。どんなに霊者が増えても何も困りません』
(八五郎)『へーぇ、重宝なところでございますな。するっていと三途の川にも川上、川下なんてものはないんでございますな』
(阿弥陀如来)『始めも終わりのありませんから、そうなりますな』
(八五郎)『これは大変お聞きにくいことなんでございますが・・・』
(阿弥陀如来)『御遠慮なさらずに、どうぞお聞きください』
(八五郎)『万福寺の和尚の話では、仏の教えを始められたのはお釈迦様ということでございますが・・』
(阿弥陀如来)『はい、そのとおりです』
(八五郎)『それなら、仏様は釈迦如来お一人ということにしていただければ、あっしらにも分かり易いんでございますが、どうしてお釈迦様以外に、やれ如来だの菩薩だの明王だの天部だのと沢山の仏様がいらっしゃるんでしょうかな。何べん説明を聞いても複雑すぎて、数も多すぎて頭に入らないんでございますよ。阿弥陀如来様もそのおひとりなので、これは失礼な話でございますが、前々から理由(わけ)を知りたいと思っておりましたもので』

|

« 梅爺創作落語『極楽詣で』(5) | トップページ | 梅爺創作落語『極楽詣で』(7) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 梅爺創作落語『極楽詣で』(5) | トップページ | 梅爺創作落語『極楽詣で』(7) »