« 梅爺創作落語『極楽詣で』(9) | トップページ | 梅爺創作落語『極楽詣で』(11) »

2018年12月 8日 (土)

梅爺創作落語『極楽詣で』(10)

(八五郎)『それじゃ、又兵衛さん、そろそろこの世に帰るとするかね。どうすればいいんだい』
(又兵衛)『先ほどの、現世の渕を見下ろす崖の上の野原へ移りましょう。はい到着しました』
(八五郎)『極楽じゃ、どこへ行くにも瞬(またた)く間だね。ここで何をすればいいんだい』
(又兵衛)『八五郎さん、お独りで、崖の縁(ふち)へ行って、下の縁の渦へ思い切って飛び込んでください』
(八五郎)『下の渦までは2間もありそうで、ちょいと足がすくんじまうな。それにあっしは自慢じゃねーが泳ぎは得意じゃねーんだよ。こんなところで溺れて土左衛門になりたくはねーな』
(又兵衛)『極楽では、死ぬというようなことはありません。大丈夫ですから思い切って飛び込んでください』
(八五郎)『お前さんも薄情だね。そんな離れたところにいないで、こちらへ来て一緒に飛び込んでおくれよ。一人じゃ心細くていけねーよ』
(又兵衛)『それではまた私もこの世へもどってしまい、堂々巡りになるって八五郎さんご自身で言っていたではありませんか。目をつぶりこの世へ戻ることを念じながら飛び込んでください』

(八五郎)『ご隠居さん、これがあっしが極楽へ行ってきた経緯(いきさつ)です』
(ご隠居)『するってぃと、お前さん現世の縁の渦へ飛び込んだのかい』
(八五郎)『もうやぶれかぶれで飛び込んだんでございますが、気がつくと、濡れも何もせずに仏壇の前に座っておりました。あっしにとっては極楽は一刻ほどの時間のつもりでしたが、長屋の外に出ると、出会う皆が、八っつぁん3日(みっか)ほど見掛けなかったけど、どこへ行っていたんだいと、ご隠居と同じことをきくもんですから、この世と極楽じゃ時間の進みが違うんじゃないかと初めて気づきました』
(ご隠居)『それで、早速太郎兵衛さんの所へ行って、お雪さんを嫁にほしいと頼んでみたのかい』
(八五郎)『へぃ、どうも驚いたことに、極楽のおっかさんの言っていたことがその通りで、とんとん拍子に縁談がまとまりました』
(ご隠居)『それは、おめでたい話で何よりですな。それにこれでお前さんが極楽へいってきたのは、夢や作り話ではないことが確かになりましたな』

|

« 梅爺創作落語『極楽詣で』(9) | トップページ | 梅爺創作落語『極楽詣で』(11) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 梅爺創作落語『極楽詣で』(9) | トップページ | 梅爺創作落語『極楽詣で』(11) »