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2018年12月 1日 (土)

梅爺創作落語『極楽詣で』(3)

(見知らぬ老人)『実は、手前はお前様の先祖にあたるものでございます。詳しく申せば、お前様の爺さんのまた爺さんで、この世では又兵衛と申しておりました』
(八五郎)『爺さんくらいまでの話なら、少しは聞き及んで知ってても、そのまた爺さんとなると、申し訳ないが皆目見当もつきませんな。へーぇ、そうかいお前さんはあっしのご先祖様なのかい』
(見知らぬ老人:又兵衛)『お前様が、日ごろ手厚く先祖を祀っておられるおかげで、この場所がすぐにわかりました。そこの仏壇の中を通ってここへまいりました』
(八五郎)『霊者というのは便利なものですな、こんな狭い仏壇の中を通って、あの世とこの世の行き来が出来るってことですな。ご先祖様とは知らずに、最前は盗人呼ばわりして、とんだ失礼をしました。どうか勘弁しておくんなさい。ところで盆でもない今の時期にどうしてここへ現れることになったんですかい』
(又兵衛)『それについては、手前も面目のない次第がございましてな。ご指摘の通り、極楽の霊者は、年に一度盆の時期に、この世へ舞い戻ることができます。三途(さんず)の川の岸辺に、そのための「渡り浜」がありまして、そこからこの世へ戻ります。私どもは、水の上も地面と同じように歩くことができますから、難儀はありません。ただし、受け入れ側のこの世の人が先祖を手厚く祀っていることが要件でございまして、この世にそのような人がいない場合は、この世へは戻れません。この世に戻った霊者の姿は、この世の人たちの目には見えません。
この度、私がこちらへ来る羽目になったのは、盆の時の「渡り浜」ではなく、三途の川の早瀬にある「現世の渕」の渦を通ってのことでございます。この「現世の渕」は、極楽では近づく必要がないとされている所ですが、つい野次馬根性で渕の崖上から覗き込んで、足を滑らして渦にはまることになってしまいました。渦の中は暗闇でしたが、やがて光がもれる裂け目が見えてきて、そこを通り抜けてみると、ここに出たという次第です。幸いお前様が普段先祖の霊を手厚く祀っていてくださった為に、仏壇の中に光の裂け目ができて、私を導いてくれたに違いありません。お前様に私の姿が見えるということは「現世の渕」を利用してこちらへやってきた霊者の姿は、この世の人にも見えるということでございましょう』
(八五郎)『なるほど、事の次第はわかりましたが、ところで、この先どうされるおつもりなんですかい』
(又兵衛)『お前様にもお目にかかれましたから、もうこれ以上この世に留まる理由(わけ)はありません。ただ、極楽へ戻るためには、ひとつ厄介なことがございましてな』

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