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2018年12月 3日 (月)

梅爺創作落語『極楽詣で』(5)

(八五郎)『生きたまま極楽へ行けるという珍しい役目を果たす人間に選ばれるのは面映ゆいことですな。いつも得意げに極楽の話をしている万福寺の和尚さんに、あっしが逆に本当の話を伝えるなんざ、ちょいと想像しただけでも痛快ですな。何やらちょいと不安の気もないではありませんが、ここはひとつ腹を決め阿弥陀如来様を信じて、この話に乗ろうじゃないか』
(又兵衛)『いや、助かります。それでは早速極楽へと向かいましょう。どうかこの仏壇の前で私の隣にお座りください。そして私の手を握り、目を閉じてください、これから一緒に「南無阿弥陀仏」と3回唱えてください。私が「はい」と云うまでは目を開けないでください』
 

(又兵衛)(八五郎)『南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏』 

(又兵衛)『はい、目を開けてよろしゅうございますぞ』
(八五郎)『へーぇ、あっという間に着いてしまいましたな。ここが極楽かい』
(又兵衛)『ここは「現世の渕」の崖の上の野原で、ここから私が足を滑らし、あそこに見える三途の川の渦に落ちて、お前様の長屋の部屋に現れたという次第です。最前あそこの渦から吹きあげられて、ここへ無事着きました。阿弥陀如来様に元の場所へ戻していただいたということでございます』
(八五郎)『水の中を通ってきたのに、どこも濡れていませんな。極楽というところは便利なところですな』
(又兵衛)『せっかく極楽へいらっしゃったのですから、お前様も覚えておられるご先祖様に会っていただいたり、この世とは違ういろいろなところへも是非ご案内したいと思いますが、まずその前に阿弥陀如来様にお礼を言いにいきましょう』
(八五郎)『阿弥陀如来様のところはここから遠いのかい』
(又兵衛)『極楽では、遠い、近いという考え方がございません。そこへいこうと思えば、そこへ行けるのでございます』
(八五郎)『なにやら、まやかしのような話ですな。ここではあっしは生粋の新参者ですから、よろしく頼みますよ』

(又兵衛)『阿弥陀如来様、只今この世から戻りました。仰せのとおりに、この世の八五郎様をお連れいたしました』
(阿弥陀如来)『おぅ、御苦労であったな。お前さんの珍しいものには何にでも首を突っ込みたがる癖は生来のもので直しようがありませんが、「現世の渕」には二度と近づかぬことですな』
(又兵衛)『畏れ入ります』

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