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2013年2月 9日 (土)

日本近世の民衆宗教(4)

学んだり、考えたりすればするほど、『自然』や『人間』について自分はほとんど何も分かっていないことを痛感して、謙虚になる人もいれば、少しの知識や拙い思考だけで、『全てが分かった』と勘違いしてしまう人もいます。梅爺もブログを書きながら、両者の間を揺れ動き、結局は自分は無知であるという思いが強くなりました。 

新興宗教の教祖や伝道者は、『我こそが真実を知る者』というように、自信たっぷりに振舞います。自信のないようなそぶりを見せれば信者はついてきませんから当然のことです。『大本教』の開祖『出口なお』は、『なになにであるぞよ』という口調で、神のお告げを述べたり書いたり(ひらがなだけの文章で)しました。実質的に教団を発展させたのは『出口王仁三郎』で、かれは文筆の才能があり、『霊界物語(全51巻)』など、沢山の著作を残しています。 

しかし『出口王仁三郎』の考え方の基本は実に単純であるように梅爺には見えます。『神と人が統一すれば、理想的な世界が実現できる』『日本を親国にして、天皇中心の世界大家族を実現すれば世界平和が得られる』『利己主義がはびこる外国も、やがて日本の考え方を受け容れるようになる』などです。一言で云ってしまえば『一君(天皇)万民』で、万民(全人類)平等(公平)な世が実現できるという主張に見えます。この考え方を進めるために、万国共通語の『エスペラント』を習得すべきなどと唱え実践しようともしています。 

『世界文明や他の宗教の歴史に関する理解』『言語の本質に関する理解』『人間の本質に関する理解』などが抜け落ちているか、または極めて浅いことに、梅爺のような人間でも気付きます。 

民衆がこのような単純な日本中心、天皇中心の思想を受け容れるのは、分からないでもありませんが、日露戦争で活躍した『秋山真之(軍人)』や『浅野和三郎(英文学者)』などの知識人も、『皇道大本』に賛意を表明していますので、『出口王仁三郎』にはカリスマ的な雰囲気があったのかもしれません。 

やがて昭和に入ると、『出口王仁三郎』は、『昭和神聖会』を結成し、『昭和維新』を唱えます。思想を実践に移そうとしたことになりますが、賛同者や信者は800万人にも及び、政治的な力も持ち始めたために、ついに国家にとって危険な団体とみなされ、弾圧の対象になりました。昭和10年に、検察が『大本教』本部を襲撃し、施設を徹底破壊すると同時に、関係者1000人を検挙するにいたりました。『出口なお』の墓は掘り返され、信者の墓碑の文字が削る取られたりもしました。あまりのすさまじい弾圧に、信者には精神を病む人や自殺者も多数出ると言う悲劇になりました。『出口王仁三郎』は無期懲役を言い渡されましたが、その後懲役5年に減刑になっています。保釈後は、畑仕事や陶芸に励み、昭和23年に76歳で亡くなっています。 

明治維新以降の日本の近代化で、軍隊は強化され、財閥中心の経済活動は活発になりましたが、富は財閥へ集中し、底辺の庶民の生活は一層苦しいものになりました。民衆は『宗教』による『世直し』や救済を期待しましたが、弾圧によってもっと苦しい立場に追い込まれることになりました。

『一君万民』で万民は平等という思想は理想的に見えても、近代国家としては実践は難しいということでもあり、『超国家主義(天皇を中心とする国際大家族主義)』という考え方も、結局は『極端な国粋主義』へ日本が進むことをむしろ助長する皮肉な結果になりました。

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