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2011年5月 3日 (火)

福岡伸一著『動的平衡』(7)

人間にとって、『身体の病』や『精神的苦痛(悩み、不安、不満など)』は『安泰』を脅かすものです。『身体の病』について、その原因(細菌、ウィルス、毒性物質)を科学が突き止めてから、未だ200年程度しか経っていません。私たちが現代に生を受けたことが、いかに幸運かが分かります。それまでの人類は、経験則による対処療法か、『祈る(あるいは、まじないをしてもらう)』しか対応の方法がありませんでした。

『元を断つ』方法を見つけて、『身体の病』に関して人間は、強力な武装ができたように見えますが、敵(病原菌、ウィルス)もさるもの、新しい攻撃方法が可能な姿に変身して(突然変異で)、虎視耽耽(こしたんたん)と人間攻略を狙っています。人間が生き残りに懸命なように、病原菌やウィルスも生き残りに懸命なのですから、冷静に観れば『お合いこ』で、両者の攻防は、『いたちごっこ』で今後も果てしなく続くのではないでしょうか。人間にとっては、不都合な存在ですが、病原菌やウィルスは、特別に人間に恨みを持って行動しているわけではなく、自然の摂理のなかで自分が『生き残ろう』としているだけです。

本来ウィルスは、ある特定の生物『種』の細胞にだけ取り付ける性質を持っていて、他の『種』には影響が及ばないのが原則ですが、『突然変異』がこの原則を覆(くつがえ)します。『鳥インフルエンザ』が『豚インフルエンザ』に変貌し、ついには『人インフルエンザ』に変わって、最近世界中がパニックになりました。ウィルスもまた自然の摂理の中で『進化』をすることを止めません。

『身体の病』の科学的対応に比べて、『精神的苦痛(心の病)』への科学的対応は遅れています。『脳』のカラクリが解明されていないこともあり、多くは対処療法にとどまっています。『神や仏に祈りをささげて、救いを求める』という行為も、不遜な表現をお許しいただければ対処療法の一つですが、これが『きわめて有効』でることが、経験則で分かっています。現代社会でも宗教の存在が大きな意味をもっている理由です。

『神や仏』という概念を『信ずる』ことが、なぜ『心の安らぎ』をもたらすのか、を解明するには、『脳』に関する知識が不足しています。

しかし、『心が騒ぐ』からこそ、『心の安らぎ』を求めるのであって、『心の安らぎ』だけでは、今度は『退屈』という『心の騒ぎ』を呼び起こすことになりかねません。『心が騒ぐ』のは、人間が生きている証拠で、死ぬまで、決して手に入らない絶対的な『心の安らぎ』を求めて奮闘することになるのではないでしょうか。人間の脳は実に厄介な代物(しろもの)です。

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