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2011年5月 1日 (日)

福岡伸一著『動的平衡』(5)

食品は、生命活動を支える素材ですので、目先の安さだけをを優先して購入すると、将来思いもよらない代償を支払わされることになるかもしれないと福岡先生は警告しています。最近は、生産者や流通ルートを明示した販売方法がとられることも多くなり、消費者は、自分でリスクを判断しながら購入できるようになりましたが、それでも、『とにかく安い方を買う』という、近視眼的な習性から、私たちはなかなか逃れられないでいます。消費者のこの習性が、安くするために偽装までしてしまう生産者を産み出す温床にもなっています。

防腐剤が添加された食品、遺伝子組み換えで、生産者にとって都合の良い品種にかえられた野菜、豆類、穀物が直接的、間接的(遺伝子組み換えした飼料を食べて育った動物の肉など)に、店頭で売られています。

防腐剤は、食品にとりついて繁殖しようとする細菌を殺すほどの能力を持っているわけですから、当然人間の身体に入っては、消化酵素も殺してしまうはずです。人間にとって危険ではない量に規制されているとはいえ、負担であることにはちがいがありません。遺伝子組み換えが行われた食品は、人間が消化のプロセスで完全にタンパク質を分解し、元の食品の情報を消滅させてしまえば、安全とも言えますが、遺伝子組み換えは、自然ではないことを植物や動物に強いるわけですから、それに逆らおうとして、人間には毒性のある新しい物質を作り出す可能性が無いとは言えず、100%安全とは言えません。

手間暇がかかる品種改良ではなく、遺伝子組み換えという手っ取り早い方法で、消費者受けの良い商品を作ったり、中には、除草剤と、その除草剤に耐性のある遺伝子組み換えした豆の種を組み合わせて売り出した、アメリカの強欲なアグリ・ビジネス大手会社の例などが、この本では紹介されています。文字通り『マッチポンプ』で、マッチ(点火手段)とポンプ(消火手段)を一緒に売ろうと言うあこぎな商法です。

自分の身体は自分でしか守れないと、神経質になって、何もかも疑いだすときりがありませんが、食品は、生命にかかわるものでありますので、最低限の知識は、消費者も持ち合わせる必要があります。そして、生産や販売に携わる人には、勿論倫理観が求められます。このバランスが保たれる国が文明国です。

生産者や流通ルートを明示するために、コストがかかり、売値が上がることがあっても、消費者はその負担を許容するのではないでしょうか。

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