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2011年4月29日 (金)

福岡伸一著『動的平衡』(3)

人間は、食べ物を口にした時から『食べ物が体内に入った』と思いますが、果たしてそうなのかと福岡先生は問います。消化器内で、食べ物が分解され(消化され)養分の一部が消化器内壁から血液内へ吸収されて初めて『食べ物が体内に入った』と見れば、食道、胃、腸の内部は未だ『体外』であるとも言えます。ちくわの内部を貫く筒状の空間は、ちくわの一部ではないという論法です。

勿論、体内、体外の定義を議論することが目的ではなく、人間は、単純に模式化すれば、ミミズのように、口から肛門までの筒状の体外部分を内部に持つ生物であると見ることができるという話です。脳とか心臓とか、私たちが非常に重要な器官であると考えますが、それらは生物進化の過程の後の段階で追加獲得したもので、ミミズのようであった時の原型が人間にも残されているという見かたは、人間を理解する上で意味があります。受精卵が分裂して人間の形を形成していく初期の段階で、筒状の『内部体外部分』が先ず確保されることも分かっています。消化器や心臓には、脳の指令とは別の自律神経があることも、どの順序で人間が出来上がっていったかを推測させる材料です。

筒状の内部空間とも言える消化器内部で、食べ物は消化酵素によって分解され(タンパク質はアミノ酸へ)、食べ物が保有していた固有の情報(タンパク質の構造情報)は消滅します。人間のタンパク質の持つ情報とは異なった食べ物固有の情報がそのまま体内に入ると、人間に悪影響を及ぼすからです。消化の本質的な目的は、吸収されやすいように細かくするということより、食べ物固有の情報を消去することにあるのだと分かります。完全に消去できれば、遺伝子操作で作られた動物、植物を食べても大丈夫という論理になります。

人間に必要なタンパク質は、吸収したアミノ酸などを利用して、再度合成されます。食べ物やサプリメントのタンパク質がそのままの形で補填(ほてん)利用されるわけではありません。

こう考えると、歳をとって関節がギシギシする人は『ヒアルロン酸』『コンドロイチン』を、お肌がカサカサしたら『コラーゲン』を、頭を良くするには『味の素(グルタミン酸ソーダ)』を摂取しなさいという話はあやしいことになります。これらはいずれも、全て人間の体内で、ありきたりのアミノ酸を材料に合成できるものであるからです。人間に効果のあるものは、人間の体内では作り出せない必須アミノ酸を外部から摂取する時に限るということになります。

関節がギシギシし、お肌がカサカサするのは、老人のタンパク質合成能力が衰えているためですので、材料のアミノ酸だけを多量に補給しても、必ずしも有効ではないということになります。老人はサプリメントのテレビ広告に、惑わされないようにする必要がありそうです。

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