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2011年3月19日 (土)

知の巨人『ジャレド・ダイヤモンド』(6)

ダイヤモンド博士の『文明崩壊』という著書には、アメリカ人が最も自然が残っていると考えているモンタナ州で、実は深刻な自然崩壊が進行していることを示す例などが含まれており、原稿を読んだ奥さんから、『こんな暗い話ばかりでは、読者は読みたくなくなるのでは』と指摘され、『成功例』も挿入したと、インタビューで話しておられます。

その一つが、日本の徳川幕府がとった、木材用途限定、植林奨励の政策です。日本は、国土の70%が森林という恵まれた国ですが、決して偶然だけではなく、先人の先見性のお陰と言うことになります。しかし、木材建築主流の日本では、それでも現在東南アジアやカナダなどからの木材輸入に頼っています。世界経済は『一蓮托生(いちれんたくしょう)』になっているわけですから、オランダの干拓地(ポルダー)に世界中の人が住んでいるようなもので、堤防の決壊があれば、裕福な人も貧しい人も関係なく大打撃を受けます。比較的裕福な日本が、資源を外国から購入できるといってみても、一人だけ生き残れるわけではありません。将来人類が生き残れるかどうかは、人類が全員『ポルダーで生活しているという認識』を持てるかどうかにかかっていると、ダイヤモンド博士は指摘しています。明治の初めまでは、日本は『木材』『主食料』の自給国であったことを考えると、今考えるべき国家政策は、これらに加え、エネルギー源の自給率を改善することではないでしょうか。

世界の現状を、『二頭の馬に引かれて疾走している馬車のようなものだ。一頭は(生き残り)という馬で、もう一頭は(破滅)という馬で、最後にどちらの馬が勝つかは今のところ分からない』とダイヤモンド博士は表現しておられます。

インタビューの最後に、『未来への提言』を一言で表現して欲しいと言う要請に対して、博士は『Hope 51%』と色紙に書きました。自分は『慎重な楽観主義者である』と言われる博士でさえも、『生き残り』という馬が勝つ確率は、1%だけ上回っているだけという厳しい警告です。しかも、それも根拠があるわけではなく、願望を込めてのことですから、私たちは重く受け止めなければなりません。

私たちは、自分の周囲だけが世界であると思い、嫌なことは考えたくないという習性を持ち、危機が目前に迫るまでは気付こうとしない面がありますが、『知の巨人』の洞察は、無視してはいけないのではないでしょうか。しかし、地球上の全員が『自分だけは、なんとか生き残れる』という考えを捨てることは、容易ではありません。人種、国家を超えて、人類がそのような共通認識を保有したことは、歴史上一度もないからです。ダイヤモンド博士が、1%に一縷の望みをかけた気持ちが分かるような気がしました。

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