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2011年3月15日 (火)

知の巨人『ジャレド・ダイヤモンド』(4)

『ジャレド・ダイヤモンド』博士が、『何故ユーラシア大陸発祥の文明が今日の文明の礎(いしずえ)になったのか』という問いに下した答は『小麦』と『家畜』でした。『小麦』は、イネ科の野生植物が原種ですが、これが『偶然』チグリス・ユーフラテス川流域に『存在』していました。『小麦』は、『高エネルギー源、高栄養素源』『高栽培効率』『備蓄可能』という特徴を有し、まとまった人口が、安定して『定住』できる要素として有利です。同じくユーラシア(アジア)に『偶然』存在した『稲(コメ)』も『小麦』と同様に定住農耕に向いた食料源となりました。中南米原種には『トウモロコシ』『カボチャ』『ジャガイモ』が、アフリカ原種には『アブラヤシ』『タロイモ』が、ニューギニア原種には『サトウキビ』『バナナ』がありますが、いずれも『栽培効率』『備蓄性』などで、『小麦』『コメ』に劣ります。

地球上には、沢山の哺乳動物がいますが、『人間が飼いならすことに成功した種』は14種で、そのうち13種がユーラシア大陸原産です。例外は南米のリャマだけです。飼いならされた動物は、飼育が可能となり、『乳の搾取』『食肉の確保』『使役』に供されることになります。馬、牛、豚、羊、山羊、象などすべてユーラシア大陸で『家畜化』されました。これも、まとまった人口が、安定して『定住』できる基盤となりました。

そう言われてみれば、『動物の宝庫』であるはずのアフリカには、飼いならすことに成功した哺乳動物が見当たりません。『シマウマ』も野生のままです。一方、農耕には適した肥沃な土地がありながら、現生人類が到達した頃の北米、南米には、『家畜』化できる動物がほとんどいなかったことになります。

文明発祥には、『小麦、コメとそれが栽培できる肥沃な土地』『食用、使役に仕える家畜』の二つが、必要条件であり、これを満たす地球上の場所が偶然ユーラシア大陸であったというダイヤモンド博士の指摘は、云われてみれば当たり前のようですが、誰も今までにそのような『文明発祥論』を述べた人がいないわけですから、説得力があります。たとえば『車輪』構造は、古代のメソポタミアとメキシコで別々に発明されましたが、馬と組み合わせたメソポタミアでは、大きな進化(荷車、戦車など)があり、馬がいなかったメキシコでは、大きな進化が起きませんでした。

ユーラシア大陸に住んでいた現生人類が、特に『賢かった』わけではなく、『偶然自然環境に恵まれていた』ことになります。『小麦、コメ』『家畜』はその後、他の地方へももたらされ、今日に至っています。羊が一匹もいなかったオーストラリアやニュージーランドは、今では世界有数の羊毛生産国に変貌しています。

『偶然の自然環境と、人間の能力とのインタラクション(相互作用)で文明が生まれた』という見解は、自然の摂理の基本に『動的平衡(自律分散処理)』が関与していると考えている梅爺には、異論なく受け容れられるものでした。自然環境の提供主が『神』であるとしても、この場合の『神』は、『意図』より『偶然』の色彩が強く、『人間だけに都合のよいもの』を提供してるようには到底見えません。人間は、自然環境の中の偶然な条件が幸いして出現し、現在棲息(せいそく)しているに過ぎません。地球の歴史の時間を巻き戻して、再度再生しなおしてみても、人間が必ず出現するという保証はありません。

『人間は、自分の手で自然環境を破壊し、文明が滅んでいく』という見解を、ダイヤモンド博士は次に展開します。

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