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2011年3月23日 (水)

梅爺創作落語『カラスは白い』(2)

(八五郎、大家の家から帰宅の道すがらの独り言)『へっ!驚いたねまったく。大家の爺さんは前から少し頭がおかしいとは思っていたけど、ありゃー相当ひどいね。ついにボケも始まっちまったのかね可哀そうに。それにしても「お前さんのような蒙昧(もうまい)な輩(やから)には、ちと分かるまいが、カラスは実は白いのじゃ」なんてよく言うじゃねーか。あきれちまうよ。でも、ここであの爺さんに下手に逆らって、長屋から追い出されでもしたら、割があわねーから、ここは一つ堪忍袋の緒をしめて、長いものに巻かれておいた方が利口ってぃもんだろうな。爺さんの前で、つい間違わねーように、てめーに言い聞かせておかねーと危ないな。えーと、「カラスは白い」「カラスは白い」・・・・・』

(熊八)『よぉ、八つぁん、浮かぬ顔してどうかしたかい。歩きながら何ブツブツ言っているんだい』

(八五郎)『どうにもこうにも、大家が大変なことになっちまってね』

(熊八)『偉そうにしていた罰があたって、ついにあの爺さんも往生でもしちまったのかい』

(八五郎)『往生してくれた方がまだましだよ。何を血迷ったのか「カラスは白い」と言いだした上に、長屋の皆の衆にも、そう伝えろと頼まれちまってね』

(熊八)『バカなことを云うんじゃないよ。昔から「カラスの濡れ羽色」てー言えば、おつな女の黒髪のことだし、「闇夜にカラス」といえば、暗い中じゃ黒いものは見え難(にく)いという例えじゃねーか。カラスは黒いに決まっているだろー。お前もまったくだらしがないね。大家の爺さんに言いくるめられたのかい』

(八五郎)『おいらも、カラスは白いなんぞとは思っちゃいませんよ。でも大家の爺さんは、どうしてもカラスは黒いと言いはる奴は、長屋から出て行ってもらうと脅かすもんだからね。ここはひとつ長いものに巻かれておいた方が利口じゃねーかと・・・』

(熊八)『何とも情けないねお前ってー奴は。そいじゃおいらがあの爺さんをひとつギャフンと言わせてやろうじあねーか』

(八五郎)『そんな強がり言って大丈夫かい。もし間違って長屋を追い出されたら、おかみさんもター坊も、路頭に迷うんじゃないかい』

(熊八)『てやんでー。そうなったって、亭主が正しいことを貫いたんだから、おっかーは「お前さんに惚れなおしたよ」というし、坊主も「おいらのおとっつぁんは日本一偉い」と言うにきまってるじゃねーか』

(熊八の女房)『へっ、そうかねー。何を粋(いき)がっているんだよ。ここは八つぁんの云うように、長いものに巻かれておいた方が利口にきまっているだろ』

(熊八)『てめー、こんなところでこっそり立ち聞きなんぞしやがって』

(熊八の女房)『何言ってんだよ。こんな狭い長屋じゃ、なにもかも筒抜けだよ』

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