« 福岡伸一著『世界は分けてもわからない』(4) | トップページ | 福岡伸一著『世界は分けてもわからない』(6) »

2010年10月19日 (火)

福岡伸一著『世界は分けてもわからない』(5)

人間の身体は、元はと言えば女性が産み出した『一個の卵細胞』が、受精後分割を重ねて、身体の各部分になり、細胞数は60兆個にまでになることが分かっています。最終的には、臓器、脳、骨、皮膚、毛髪といった、『部品』となる細胞が、最初は『一個』の分割から始まるわけですから、逆にいえば最初の『一個』は、将来色々な『部品』の細胞に変貌できる資質を保有していることになります。人間の身体は目もくらむような『カラクリ』に支えられている『超分散処理システム』です。

この、『将来色々な部品(細胞)に変貌できる資質を持った細胞』は、『ES細胞(胚幹性細胞:Embryonic Stem Cells)』と呼ばれますが、この『ES細胞』と同じ資質をもつ人工ES細胞、『iPS細胞(人工多能性幹細胞:Induced Pluripotent Stem Cells)を作り出そうという研究が最近注目されているのはご存知の通りです。

女性の卵細胞から人間の『iPS細胞』を作り出そうという研究が主流でしたが、京大の山中教授の研究室が、人間の皮膚細胞から『iPS細胞』を作り出すことに世界で初めて成功し、脚光を浴びました。卵細胞は生命の原点ですから、これを犠牲にして『iPS細胞』を作り出すことには倫理上の問題が残りますが、皮膚細胞は再生機能もあり、これを材料に『iPS細胞』が作ることには、あまり罪悪感を伴わないからです。

梅爺は、『iPS細胞』を利用すれば、重い心臓病、糖尿病、異常遺伝子による難病などの治癒が可能になるかもしれないと、新聞報道を皮相的に理解して期待していました。そこまで深刻でないにしても、虫歯や頭髪の抜け毛の悩みも解決するとなれば、これはありがたい話だと単純に考えていました。

しかし、福岡先生の本を読むと、ことはそう単純でないことが分かりました。つまり『iPS細胞』を、目的の(任意の)部品細胞に変える『条件』が、現状では皆目分かっていないということです。科学は、生命の神秘を『良い線』まで追いつめてきたとは言えますが、最後の『難関』を越える目途が、全く立っていないということで、『やっぱりそうか。世の中甘くないな』と反省しました。

梅爺が、頭髪フサフサの昔にかえるという期待は、当分実現しそうにありません。

|

« 福岡伸一著『世界は分けてもわからない』(4) | トップページ | 福岡伸一著『世界は分けてもわからない』(6) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 福岡伸一著『世界は分けてもわからない』(4) | トップページ | 福岡伸一著『世界は分けてもわからない』(6) »