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2009年7月 4日 (土)

蔵本由紀先生の『非線形科学』(3)

著者の蔵本先生が、初めてこの学問に興味を持たれたのは、1970年代の初頭で、当時は『非線形科学』は未だ萌芽(ほうが)程度の段階でしたから、歴史は、たかだか40年ということになります。梅爺が大学を卒業したのは、それ以前の1964年(昭和39年)ですから、『学校で習わなかったことを知らないのは当然』と、弁解はできますが、その後の社会生活の中で、断片的ではあれ、何らかの情報に接する機会は、何度もあったわけですから、今頃になってようやく勉強しているのは、褒められた話ではありません。

当時、蔵本先生を惹き付けた熱力学の新しい理論を書いた本の表紙には、ヒンズー教の『踊るシヴァ神』が描かれていて、『妖しいときめき』を感じたと書いておられます。ヒンズー教は、この世を『創造』『維持』『破壊』の繰り返しと見て、それぞれの役目を担う『神』がいるととらえています。シヴァ神はそのうちの『破壊』を司る『神』ですが、同時に『創造』にも関与していると考えられています。

『この世界は、崩壊と創造、死と再生がたえまなく進行するダイナミックな世界です』と蔵本先生は、書いておられます。何故、それまでの物理学は、このような現実世界の『実相』にほとんど関心を示さないのかと訝(いぶか)り、この学問に没頭するようになったとも述懐されています。『死と再生がたえまなく進行し、全体としてはダイナミックな平衡(動的平衡)を保つ』のは、人間の身体も、人間社会も、自然も、まさしくそのように、見受けられます。『非線形科学』の真髄は、この『破壊と創造の動的平衡』のルールを見出そうとするものと、梅爺は理解しました。シヴァ神は、その象徴としては、うってつけです。そして、古代のインドの人が、現代にも通用する鋭い『世界観』を持っていたことに驚きます。

『散逸』と『自己形成』がたえまなく進行しながら動的な平衡を保つ、などと言われると、なにやら難しい話に聞こえますが、人間の体は、毎日1兆個の細胞が死に、それを補う新しい細胞が生まれて、全体としての『命』が維持されていると言われていますので、このことかと思えば、容易に得心がいきます。梅爺は、自分で『認識』することなく、この『動的平衡』で『生きている』からです。

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