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2008年6月 9日 (月)

面白さ満載の本(4)

『The Interpretation of Murder』という小説の中で、シェークスピアの『ハムレット』の一番有名な台詞『To be or not to be, that is the question.』の解釈が重要な役割を演じ、ある場面の会話でも、有効に使われます。

日本では、一般に『生か死か、それが問題だ』と訳されます。梅爺は、人間が生か死かの選択を迫られるのは、確かに大変な問題とはおもいますが、選択を迫られる原因に言及しないで、嘆いてみせるのは、少し大袈裟ではないかと、ぼんやり感じていました。

この小説の中で、フロイトは次のような解釈を展開します。『to be』は『今のままで存在し続けること』、『not to be』は『今のままで存在し続けないこと』と解釈します。つまり、ハムレットが、自分の父であった王を殺害し、自分の母と結婚して王位についた叔父を、容認するか、叔父を殺害するかの選択で悩む言葉であって、ハムレット自身の生死のことではないという解釈です。フロイトのことですから『エディプス・コンプレックス』で、ハムレットは母親の再婚相手(叔父)に無意識な嫉妬を感じているのだとも主張します。もし、そうならシェークスピアは、とっくの昔に、人間の『エディプス・コンプレックス』についての理解していたことになります。

小説の中に主人公として登場するアメリカの若い精神医学者は、更に拡大解釈し、『to be』を『ありのままで存在すること』、『not to be』を『ありのままで存在しないこと』と考えます。人間が、何かの行動を起こすと言うことは、何かの『役割を演ずる(to seem)』ことであり、どんな行動でも、行動に及んだ時点で『to be』ではなくなってしまうという矛盾を抱えながら、人間は生きているのだ、という主張です。少々哲学的で、難解な説明ですが、なるほどと思わせます。

推理小説のつもりで読み始めて、思いもよらず梅爺は、『20世紀初頭のニューヨークのありさま』『精神分析医の診断プロセス』『フロイトとユングの確執』『ハムレットの台詞の解釈』と、沢山のことを知ることができました。たかが推理小説と侮るわけには行かないことが分かります。

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