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2008年5月24日 (土)

イラクからのアメリカ帰還兵(1)

アメリカのイラク侵攻から5年が経過し、その意味を問いかけるアメリカのテレビ局が作成したドキュメンタリー番組が、NHKBS放送で、5回にわたり放送されたのですが、梅爺は、うっかりしていて、1回分しか録画できませんでした。その内容は、『イラクからのアメリカ帰還兵』に焦点をあてたもので、最近観ました。

イラク侵攻の最初の作戦に参加し、1年後に帰還した4人の若者(将校ではない兵卒)のその後を、何年にもわたり追い続けた内容で、その深刻な内容に、観ていて心が暗くなりました。

昔から、戦場を体験して帰還した兵士の約1/3が、何らかの精神障害をその後発症するといわれていますが、アメリカのイラク侵攻も例外ではないようです。

番組で取り上げられた4人は、いずれも帰還時には、『英雄』として地元から熱烈な歓迎を受けるのですが、その後、うまく他人と接することができなくなり、社会復帰ができずに、悩むことになります。

敵味方なく転がる焼け焦げた死体や、バラバラの死体を乗り越えながら、敵を狙撃し、殺し、時には、今まで共に闘ってきた仲間の悲惨な死にも遭遇するという、地獄のような経験をした兵士達は、帰還後、幻覚や不眠症に悩まされることになります。

4人はいずれも、純真な青年で、出征前は、『愛国心』に燃え、または圧政に苦しむイラクの人たちを解放しようと考え、そのためには、最悪自分の死も受け容れようと覚悟をしていました。

しかし、開戦後、時間が経過するにつれ、アメリカ兵の犠牲者も増え、アメリカ社会に、イラク侵攻の意義を疑問視する批判がひろまり、帰還兵達は、一層自分達の身の置き場がなくなっていきます。

それでも、なんとか『自分達の行動は意味があったのだ』と、自分で自分に言い聞かせようとすればするほど、精神障害は重くなっていきます。

なんとか立ち直ろうと、大学へ復帰したり、モルモン教の宣教活動のために南アフリカへ出向いたり、不良の子どもを善導するボランティア活動に参加したり、恋人を作って交際したりしますが、いずれも、長続きしません。

梅爺が、最も暗い気持ちになったのは、その中の一人が、『結局アメリカ社会の中に自分の身の置き場はない。たとえ死ぬことがあっても、戦場に戻った方が、生きがいがある』と主張して、家族や友人の反対を押し切り、イラクの前線へ戻ってしまうことでした。しかし、この青年は、今度は前線には配置してもらえず、再び除隊して、結局貧しいアジアの国へ放浪の旅に出てしまいます。見かけ上豊かで、平和なアメリカと異なり、毎日死と隣りあわせで生きている貧しい人たちの生活が、世界にあることを知ってしまった真面目な青年は、もう、アメリカでは暮らせないと主張します。

梅爺には、これらの事実を小賢しく論評する資格がありませんが、それでも、過酷な体験で人間が変わってしまうことについて考え込んでしまいました。

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