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2008年2月20日 (水)

福岡伸一氏の本再び(1)

『生物と無生物のあいだ』の著者、福岡伸一氏は、日本を代表する生命科学(化学)の学者でありながら、並々ならぬ文才の持ち主であることを、以前に紹介しました。

生命化学について、何の見識を持たない梅爺のような素人でも、ワクワクしながら読み通せ、複雑で難しいこの学問分野の勘所が分かったような気になるわけですから、『本の価値』は著者の文才で決まることがよく分かります。このような、ある意味で難しい内容の本がベストセラーになる日本と言う国も、捨てたものではないと嬉しくなりました。

本屋の書棚を眺めていて、今度は福岡伸一氏の『プリオン説はほんとうか?』を見つけ、迷わず購入しました。正直に申し上げれば、『プリオン』とは何かについて梅爺は、何の知識も持ち合わせていませんでした。しかし、『福岡伸一氏の本』であるというだけで、たとえ『プリオン』が何であれ、『面白いに決まっている』と梅爺には確信がありました。相当な入れ込みようです。

一気に読み終えて、『生物と無生物のあいだ』と同様に、期待通りの深い満足を味わいました。

ヒトのヤコブ病、牛の狂牛病、羊のスクレイピー病、は病名は異なりますが、『同じ病原体』で発症する病気で、この病原体につけられた名前が『プリオン』であることが分かりました。病原体の正体は、確定されていませんが、この病気にかかった動物の脳の中に、健康な動物には存在しない『特殊なタンパク質』が蓄積されていることが分かり、このタンパク質が病原体であるという『仮説』を展開した、アメリカのスタイナー・プリシナーが、その功績により、1997年に、ノーベル生理学・医学賞を単独受賞しました。『プリオン』はプリシナーの命名(タンパク性感染性粒子の略)です。

この病気の、特異で恐ろしいところは、潜伏期間が異常に永いこと(ヒトの場合は数十年に及ぶことがある)、感染の初期には、発熱などの自覚症状が全く現れないこと、最終的に脳が異常タンパク質で犯され、脳神経が死滅して後にはスポンジ状の空胞が残り、感染したヒトや動物は100%死に至ることです。

何も知らない、梅爺は、ここで『なんと恐ろしいこと。病原体を見つけたプリシナー先生は偉い』と思って終わりになるところですが、福岡伸一氏は、なんとこのノーベル賞受賞学者の『仮説』に、疑義を抱き、科学的な徹底検証や反論を試み、対抗する『仮説』までも提示しようとします。『そんな偉い先生に楯突いて、大丈夫か』と梅爺は心配になりながら、野次馬根性で、『最後はどういうことになるのだろう』とミステリー小説を読むように、本に引き込まれてしまいました。

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