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2008年1月22日 (火)

こんなに近く、こんなに遠く(2)

イラン映画『こんなに近く、こんなに遠く』の主人公は、脳外科の名医で、金も名誉も手に入れた中年男性です。彼の家族は、遊び好きな妻(後妻)と、前妻との間にもうけた成人間近な息子です。この息子は天体観測趣味に熱中しています。主人公は、家政婦を雇い、プール付の豪邸に住み、ベンツを乗り回し、診察時間の合間に、インターネットを利用して競馬の馬券を買うなどと、『成功した男』の生活を満喫しているように見えますが、家族の心は他人のように疎遠になってしまっています。

息子の誕生日に、プレゼント用に購入した天体望遠鏡が勤務先の病院へ届き、それを持って帰宅しようとした時に、別の病院から手違いで送られてきた一人の患者の脳CTスキャン画像をふと目にします。そして、それがなんと自分の息子の診断画像であり、更に深刻な脳腫瘍に犯されていることを知ります。自分の患者には、どの馬券を買おうかと頭の隅で考えながら、事務的に冷酷な死の宣告をしてきたにも関わらず、息子の死を予感して動転し、同じ家に住みながら息子の異変にも気づかなかった自分を責め、家へ帰りそびれてしまいます。

翌朝、憔悴しきって帰宅しますが、妻は友人達と旅行へ出かけ、息子も誕生日に帰らない父親に絶望して、仲間と砂漠の中の村で行われる天体観測競技会へ参加するため出かけてしまったことを知ります。父親は、良心の痛みを抱えながら、天体望遠鏡をベンツに積んで、直ぐに息子の後を追いますが、目的の村に着いた時には、競技会の場所が、更に遠い砂漠の中の鉱山廃墟跡に変わっていて、息子に会うことができません。打ちひしがれて、鉱山廃墟跡をベンツで目指しますが、ガソリンは切れ、その上砂嵐に遭遇し、車ごと砂の中へ閉じ込められてしまいます。息子が小さな子供であった頃のことを朦朧とした意識の中で回想し、死を覚悟した時に、ベンツのサンルーフが割られ、息子達が救助に来たことを知ります。

車の中から差し伸べる父親の手と、サンルーフから差し伸べられた息子の手が、システィナ礼拝堂のミケランジェロの天井画『天地創造』のように、近づくところで、映画は終わります。

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