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2007年12月20日 (木)

福岡伸一氏の本(3)

『生物』を『無生物』と区別する定義として、誰もが『自己複製能力』を思いつきます。生物が『自己複製』するには、細胞内のDNAに書かれた情報(遺伝子情報はその一部)が、細胞分裂時にコピーされて継承されていく『しくみ』が利用されていることが20世紀の後半に解明され、この『しくみ』を最初に発見し論文発表した人たち(ジェームズ・ワトソン、フランシス・クリック)は、ノーベル賞を受賞しました。20世紀最大の発見とも、人類が『神に近づいた』の歴史上の大発見ともいえる偉大な功績です。

それにしても、DNAは何と巧妙にできているのだろうと、梅爺は唖然としてしまいます。たった4個の情報表現記号で、膨大な遺伝情報を伝えるしくみ、2本の情報が書き込まれている螺旋が、ミラー・イメージになっていて、どちらかが破損しても、全体が修復できるしくみなど、コンピュータの世界さながらです。しかも、何億年も前の最初の『生物』からこのしくみは継承されているのです。こんな『しくみ』が偶然できたとは考えにくいのですが、今のところ『必然』の要因が分かっていません。『神』のイメージがつらつくのも無理からぬ話です。

福岡氏は、あと一歩まで『栄光(ノーベル賞などの栄誉)』に近づきながら、最後に要領の良い『とんび』に『あぶらげ』をさらわれてしまった、不運な学者達の努力も記述し、アカデミックな世界も、俗世間同様に、欲望が渦巻く『いかがわしさ』が存在する場所であることを読者に伝えています。ここで、『結果』ではなく『プロセス』に『面白さ』が存在することを読者は体験します。

『生物』と『無生物』を区別する要因は、『自己複製能力』だけではない、と福岡氏は主張されます。そして、この本の『主題』である、『生命とは何か』に肉薄していき、『生命とは動的平衡にある流れである』という表現に到達します。

論理にうるさい方は、直ぐこの『動的平衡』という表現に、矛盾を感じられることと思います。『平衡』は元々、飽和状態などのバランスが取れた状態で『動きがない状態』を表す言葉ですから、『動的』という形容詞句との共存は矛盾しているように見えるはずです。

しかし、福岡氏の主張は、奥深いもので、この一見パラドックスに見える表現の中にこそ、『生命』の本質があることを読者は知って、『ウーン!ナルホド』と唸ることになります。生物が、ミクロなレベルで無秩序な動きをする『原子』で構成されていながら、全体としてマクロには『秩序』を維持していることの謎が、この本の中で、解き明かされていくからです。

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